『藤子不二雄Aのアニメ・ゴルフ・ルールブック』巨匠の名を冠するちょっぴり謎の教材OVA！

■監督：西村純二
■1989年
■45分

長きに渡って先頭を歩き続け、後に続く者にシッカリとまんが道を残してくださった、史上最高の巨匠タッグ藤子不二雄F＆藤子不二雄A先生。

『ドラえもん』や『忍者ハットリくん』など、チビッ子たちがとっても大好きな児童マンガだけでなく、おふたりとも「大人向けのシリアスマンガ」も数多く描いておられたことはマンガ好きならみんな良く知るところ。
そして、巧みに張られた伏線が見事にオチにつながっていく計算され尽くしたストーリー構成の天才的手練れっぷりでは文句なくF先生に軍配が上がる。
しかし「無邪気なほどの残酷さ」という点ではA先生ではなかろうか？

伏線など知ったこっちゃ無く、問答無用で容赦なく、突然に登場人物たちが不幸のどん底にドーン！と突き落とされてしまう『笑ゥせぇるすまん』に代表される黒・藤子不二雄A先生の作品群が持つ「無邪気なほどの残酷さ」は、読者の心のスキマを強引に墨ベタのような暗黒で埋め尽くす！

中でもやはりあの作品。
もはや伝説すぎて、近年にいたっては缶バッチやTシャツまで作られてしまったあの作品。
社会に適応できない内向的な青年が、出勤できず、家に閉じこもり、永遠の日曜日を過ごすことになるあの作品。
『明日は日曜日そしてまた明後日も……』である。

「ひきこもり」という言葉がまだない時代に描かれ、後に日本が抱えることになるこの社会問題を予言していたと言われる伝説の暗黒短編マンガ。
これには私も、青春ど真ん中の学生時代にずる休みの布団の中で読み、まるで将来の自分を見るようで、完全にお先真っ暗な気分になったものである。

（『明日は日曜日そしてまた明後日も……』は下記短編集に収録されています↓）

藤子不二雄Aのブラックユーモア（２）藤子不二雄Ａのブラックユーモア (藤子不二雄（A）デジタルセレクション)

小学館

「ひきこもり問題」を予言した恐るべき伝説のあの作品『明日は日曜日そしてまた明後日も……』も収録！

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そんな偉大なA先生の名を冠する、ちょっぴり謎の80年代OVA！
それが本作『藤子不二雄Aのアニメ・ゴルフ・ルールブック』である。
「謎」というのはこの作品、大変失礼ながらすこぶる知名度が高くない。
A先生の仕事史においても、語られているのをあまり見たことがない。
いったいどのような経緯で作られた作品なのだろう？

ゴルフと言えば、A先生の『プロゴルファー猿』はマンガもアニメも確かに大ヒットという夢を勝ち取っていた。
その流れで作られたのだろうか？（スタッフは同じ）
「企画」にアニメ界の装甲騎兵こと高橋良輔さんのお名前があるのも、声優陣が超豪華なのもちょっぴり謎。

ジャケット裏にはゴルフルールについてのクイズが10問出題されており「全問正解の方は、このビデオは不要です。」とあり。ルール無用の強気の文言。

ゴルフと言えばオバケが出そうな異様な静寂さでおなじみの「ファミコンの最初のゴルフ」しかわからない私は1問もわからず。

そしてセレブなスポーツであるゴルフなど、これからもどうやら一生やることのなさそうな、勝ち組の道からはずれまくり上げた人生OB野郎の私がビデオをガチョンとセット。
すると画面に登場したのは4人のプレイヤー。

ゴルフ歴が1番長い、落ち着きのあるコメントじじい、枯田老人（声：北村弘一さん）。

周りのことを何も考えないパワフル大振りクソ野郎、大振力也（声：大塚明夫さん）。

コース上での立ちションやセクハラも全然いとわない、「プロゴルファー猿」ならぬ「アマゴルファー屑」とも言うべきナイスクズ、社長（声：穂積隆信さん）。

そしてお色気おもてなし要員、若原みどり（声：日高のり子さん）。

この4人がコースを回り、ゴルフボールの姿をしたドクタールールなるキャラが（声：富山敬さん）要所要所で解説。

観終わると、あらビックリ！
ゴルフの基礎知識が頭の中にナイスインしており、ジャケット裏の問題もスラスラ解け、いつでもコースに繰り出せるという学習教材ビデオのような作り。

お色気要員のみどりちゃんに対するぎりアウトなセクハラや「三球なのに誤球とはこれいかに？」など、新橋のサラリーマンみたいなオヤジギャグをはさみつつまあまあ淡々と進み、最後には作画監督の本橋秀之さんのうっぷんを晴らすような気合の入ったハイクオリティで描かれた奇跡のホールインワンがテレビアニメ版『プロゴルファー猿』のオープニングばりに大迫力で炸裂して唐突に幕を閉じる。