『爆走サーキット・ロマン TWIN』テレビでは無理なハードな六田ワールドをOVA化!

■総監督:石黒昇
■1989年
■85分

 

個人的に六田登先生の最大の衝撃作は、やはりあの原作版『F』だった。
なにせチビッ子のころ週刊少年サンデーに連載していた、かわいい二頭身ギャグマンガ『ダッシュ勝平』を「見たいもの見たい」とあかねちゃんの純白パンティにドキドキしながら読み、オープニングからとばしててカッチョいいストレートな青春レースアニメだったテレビ版『F』を観て「何人たりとも俺の前は走らせねえ~!」と心の中でシャウトしながらチャリ激走で学校に通うFOOL BOY(バカ少年)だった。

 

F – エフ 前期 OP

 

そしてその後に原作版の『F』に入っていったものだから、衝撃はハンパなかった。
それまで触れて来た六田作品はもちろん、アニメ版『F』とも全然ちがう大人の肌触りに、はからずも女体に触れてしまった童貞ばりにギョッ!「えっ!?原作はこういうマンガだったの!?六田先生ってこういうハードでダークでアダルトなマンガ描いてたの!?」と心底驚いた。
特に「ユキ」のくだりと、終盤に訪れるあの見開きの「○○シーン」のショックといったらもう…ゴールデンタイムのテレビアニメではありゃそりゃ絶対無理!

 

『F』の衝撃後に、小学館から出ている『オレのまんが道』という、漫画家インタビュー本を読んだ。
その中で六田先生が、ある「ターニングポイントとなった作品」について触れておられた。
担当の編集の方をだましてまで描いた、それまでダッシュしてきた明るい勝平路線とはまったく違うその作品のタイトルは『風炎』。
平凡な中年サラリーマンが、いつの間にか犯罪計画に巻き込まれ、道を踏み外して堕ちて行く嫌サスペンスだ。
この柳沢マンガばりに暗くて怖い作品を発表した時のことを、次のように話しておられる。

 

読者からの反応がすごかったの。”勝平好きだよ♥” ”いつも読んでますゥ”みたいな反応じゃないわけ。(中略)”身につまされる話でした”とか、たんねんに読んで、主人公の気持ちをカッチリつかんでくれた手紙ばかりなんですよ。
こんなにしっかりした読者がいるのか、オレは何と今までいいかげんに、読者をバカにして、ナメて描いていたんだろう。

 

そして、この『風炎』の後に『F』の連載を開始、以後は青年誌で精力的に作品を発表されることになるのである。

 

海が鳴く時
ビーグリー
『風炎』が収録されています

 

『TWIN』も、青年誌『ヤングサンデー』で連載された作品。
複雑で不幸な生い立ちから、自分の「生」に疑問を持ち、ヤクザやトラックにも突っこんでいく重度の死にたがり主人公ヒョオ。
ふとしたことから、自分に思いを寄せる女性、仲間、そしてバイクレースと出会い、自分の存在理由を「神」に問うように、死と隣り合わせのスピードの世界に身を投じていく。

 

本作も『F』とデッドヒート可能なぐらい、暴力、薬物中毒、幻覚、精神病、などなど…闇要素満タンでストーリーが加速。
そして終盤、すべての登場人物がそれぞれの思いを抱え、最終レースが行われる筑波サーキットに命がけで集結していくアガる展開からのクライマックス!
命を削る過酷なレースの果てについに「神の声」を聞き、絶望的な角度であちこちねじ曲がった、血まみれのメチャクチャな体で、生まれ変わるように立ち上がるヒョオの姿。
若くしてトップ漫画家に登りつめた六田登先生の凄まじい「漫画力」が誌面からほとばしるような迫力の名シーンだった。

 

このOVA版は、原作のハードな要素はテレビアニメ版『F』ばりにかなりオミット。
薬物中毒や、ただのマスコット的な謎のバーテンだと思ったら実は超重要なキャラクターだった「ジェイソン」のエピソードもなし。
闇の中で血と汗にまみれてのたちまわるような黒六田ワールドな展開は薄め。
テレビでも放送可能なイイさじ加減の青春爆走サーキット・ロマンが「85分」というOVAでは比較的長めの時間で完走する。

 

 

肝心な場面で作画や音楽がちょっと微妙だったりもするが、背景動画を駆使したバイクシーンは、なかなかのスピード感。
また主人公ヒョオの不幸な生い立ちを抽象的に見せる、原作にはなかった悪夢のようなファーストシーンもホラーばりに怖い!

 

 

 

原作に比べて健全すぎるところは、正直、個人的にはちょっと物足りなかったりもしたのですが、1本の作品として手堅くまとまっていると思う。
原作と合わせてぜひ!…と言いつつ、現在、視聴はかなり困難なもよう!

 

  • オススメ度…63/100
  • 無料動画の配信…なし
  • 有料動画の配信…なし
  • ソフトのレンタル…なし
  • ソフトの販売…中古のVHS
海が鳴く時
ビーグリー
『風炎』が収録されています