『風を抜け!』 めずらしいモトクロス・アニメ

■監督:古瀬登 池上誉優
■1988年
■42分

 

OVAではめずらしい…というより本作がたぶんたった一つ!
格闘技ばりに生傷が絶えないハード極まりない「モトクロスの世界」を描いたアニメ作品だ。

 

原作は、少年サンデーに連載されていた、村上もとか先生のマンガ。
負けん気がツナギ着てバイクにまたがってるようなガッツあふれる少年・一文字 慧(いちもんじ けい)が、モトクロスの世界の頂点めざしてワキ目もふらず一直線!アクセル全開ブッ飛ばしていく物語。

 

村上先生の会心の一本、剣道マンガ界の不動の大将『六三四の剣』が、私も もちろん大好きだったので、その後に始まった本作『風を抜け!』もリアルタイムでワクワク読んでいた。

 

今でも強烈に覚えているシーンがある。
高校進学せず、モトクロスの世界で生きていく決意をしたケイが、父親と共に校長室に呼び出され、猛反対&説教されてしまう。
しかしケイはひよらず、自分の意志を貫き、父の誇りも守る。
そしてその後、全校生徒がボーゼンと見つめる中、雪が散らつく冬の校庭で、1人、気持ち良さそうにバイクを乗り回すのである。

 

これは…本当に いいシーンだった。
窮屈さを感じつつも、そこから出ていく勇気もなく、そんな選択肢すら考えられず、決められた枠の中であちこちぶつけて身も心もチンケなケガまみれだった、どうしようもなく普通のイケてないヤツだった私は、何にもしばられず、人と違う道を自由に走っていくケイに憧れたものである。
帰宅部で、ファミコンが友だちで、モトクロスのことは『エキサイトバイク』しか知らない私も夢中で読んでいた。

 

とにかく連続で続くレースシーンの迫力が凄い!
空高く飛び、激しくぶつかり合い、泥にまみれ、血へどを吐いても、アクセル全開で駆け抜けていくレーサーたち。
まるで村上先生の筆もうなりを上げて走っているよう!ページからアドレナリンが噴き出している!

 

 

そしてもちろんあの「風を抜く」瞬間の描写。
同じくサンデーに以前、連載されていた、小山ゆう先生の『スプリンター』にもあったが、スピードの限界を超えた、選ばれた者だけが見ることのできる向こう側。
それまでの凄まじい迫力のレースシーンすらブチ抜いて超えて行くほとんど「あっちの世界」のような描写は必見!ページからエンドルフィンも噴き出している!

 

それにしてもバイクを描くのって大変だと思う…
あのオフロードタイヤのボコボコや、エンジン回りとかのゴチャゴチャを描くことを想像しただけで、私なんぞは泡吹いて倒れそうになってしまう。
よくこのクオリティーで週刊連載で…
村上先生は本当に何とすごい方なのだろう!私なんぞが今さら言うことでもないが!

 

 

しかも!
こちらのインタビューを読むと、村上先生は『六三四の剣』が大ヒットした後、5年間ぐらいずっとスランプになっておられたそうだ。
朝、仕事場に行きたくなくて、吐き気がするほどの状態だったとのこと。

 

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『六三四の剣』の後の5年間というと、ちょうどこの『風を抜け!』と、以前このブログでも取り上げさせて頂いた、ボクシングマンガの名チャンピオン『ヘヴィ』の連載時期である。
そんな状態でもこの傑作2作を…まさにプロ中のプロ!

 

原作は全13巻。
日本の地元での草レースから始まり、青春マンガっぽく美少女との胸キュンエピソードや、ツッパリ軍団との大ゲンカなどもはさみ、モトクロスの世界に本格的に飛び込み、アメリカでチャンピオンの座をかけて走るようになるまでを描いている。
そのため、1本のOVA作品として40分前後の尺に収めるのは、どうしたって難しい。
原作の4巻から7巻ぐらいまでをピックアップした形になっており、ケイが「アニキ」と慕う風祭や、ライバル、ジェフとの関係などはやっぱりちょっと説明不足で、ダイジェスト感があるのは正直否めないかもしれない。

 

 

しかし、神OVA『バリバリ伝説』の作画でも腕をふるった古瀬登さんが監督し、個人的にはラストの試合よりも一番燃えた7巻のジェフとの死闘に話を絞り、アクセル全開ひたすらレースシーンで攻めて攻めまくった構成は、胸を熱くオーバーヒートさせるのに充分!

 

 

ケイを演じた真木蔵人さんは、けして上手くはなく、もしかすると賛否分かれるのかもしれないが、荒々しくも初々しく、ケイっぽくて良かったと思う。
名ライバル声優・池田秀一さんが演じたジェフはもちろん凛々しい!
2人と共に、風を抜いた不思議な世界を体験しよう!

 

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