『悪魔の花嫁 蘭の組曲』 枯れることを知らぬ妖しい蘭のように美しい 

■監督:りんたろう
■1988年
■32分

 

私がまだマンガの読み方もおぼつかないぐらい幼き頃、『月刊プリンセス』で連載が始まり、時が流れ、昭和が終わり、平成もいよいよ最後の時を刻みつつある今も、未だ終わらぬ超長期連載作。
少女マンガ界の永遠のプリンセス・あしべゆうほ先生の代表作。
そう!『悪魔(デイモス)の花嫁』!

 

私は小1で『デビルマン』の虜になってしまったぐらい、子供の頃から「オドロ趣味」があったので、近所の本屋でいつも見かける、あしべ先生のこの悪魔にも抗いがたくグイグイ魅かれまくり。
「この『あくまのはなよめ』ゆうマンガ、ぶち怖うておもしろそうじゃのう!」と立ち読み。
「悪魔」と書いて「デイモス」と読むことを知り、少女マンガにも勧善懲悪の型に簡単に収まらぬ、無情な世界があることを知った。
読後、複雑な思いを抱かせる「人の心の闇」を描いた陰鬱かつ見事な構成の物語が、美しい絵で葬列の花輪のように紡がれたオムニバス作品だった。
ホラー色より暗黒人間ドラマとしての要素が濃く、予想とは違うが期待どおり怖かった。

 

そしてなんといってもデイモス!
ヒロイン・美奈子を、花嫁として黄泉の世界に連れて行くべく、影のようにいつもつきまとう、何気に一途なイケメン・ストーカーのデイモス!

 

 

特にそんなに悪いことしてないのに、美奈子と関わった男たちが、彼の呪いや罠によって残酷な最期を迎える様に戦慄!
なにせ、優しい幼なじみが「名画に閉じ込められてパリ行き」になったりするのだ!「何言ってんだかわからん!」と言われるかもしれないがホントにそうなのだ!
しかし「む…むごい!」と思いつつ、時には悪モノから美奈子をソッと密かに守ったりするデイモスさんに、いつしかスッカリまんまと魅了されたのであった。

 

このOVAでは、そのデイモスの麗しさ、あしべゆうほさんの美しき世界を見事に完全再現!
りんたろうさんが監督し、『妖獣都市』の天才・川尻善昭さんが参加した作画が、枯れることを知らぬ蘭のように、今なお全編妖しく美しい!
デイモスを演じた野沢那智さんのシブいお声もたまらん!(登場の仕方もイチイチ麗しい↓)

 

 

また、永遠のクールボイス王子・塩沢兼人さんも、恐るべき秘密を抱えた影のある美青年役で参加。
花をしょった、この美しい姿で、あの麗しいお声で、倒れたヒロイン・美奈子を抱き「大丈夫かい…?ここは慣れないと…花の香りにあたることがあるんだ…」なんておっしゃるのだ!たまらん!

 

 

古い屋敷にひっそりと住み、美しい蘭を育てる姉弟の恐るべき秘密が、蜘蛛の巣をヒントに暴かれていく物語は短編ミステリーとして上質で見応え充分。謎めいた展開にからめとられ、夢中でラストまで見入ってしまうだろう。

 

上映時間32分。
「このクオリティーで…テレビシリーズとかで…もっと観てみたかったナ!」と思った。
いや!
原作としてせっかくあれだけ素晴らしいストーリーがたくさんあるのだし、今も連載は続いているのだし、そういう企画が上がってもまったくおかしくない。
そしてもし実現したら充分ウケるのではないだろうか?
そうそう!
四半世紀以上前の作品ですが、さいきん流行りの「壁ドン」もありますよ!

 

 

  • オススメ度…78/100
  • 無料動画の配信…Youtube
  • 有料動画の配信…なし
  • ソフトのレンタル…なし
  • ソフトの販売…中古のVHSがたまにあるかも?