『湘南爆走族II 1/5 LONELY NIGHT』原作の伝説的シリアス神回をさらにドラマチックに!

■監督:西沢信孝
■1987年
■55分

 

「湘爆のさ、江口と権田がメチャクチャに殴り合う話。あれ凄かったな…」
「ああ『1/5 LONELY NIGHT』 ね。あれ、アキラのキレるとこも凄いよね…」

 

私と知人とのある日の漫語りの一コマである。
80年代から90年代にかけて青春ツッパリ漫画のトップを爆走し続けた『湘南爆走族』を、あのころ夢中で追いかけた方なら、上記の会話に「ウム!」と深くうなずいて下さると思う。

 

 

『湘爆』は、基本的に一話完結方式の青春ギャグなのだが、ときどきシリアス回がある。
その中でも『1/5 LONELY NIGHT』は、おちゃっぴいが完全封印された、ひときわ異色なシリアスさ。
湘爆やリーダーの江口が、実話ナックルズな数々の都市伝説を持つ超ワルとして畏怖の対象であることを再認識させられるダークな不良社会描写…
ピンチから助けられた女の子も読者もドン引きな、リアルで凄惨で斬新な暴力シーン…

 

 

各誌に連載を持つ大人気漫画家となり、油がのりまくり、どう見ても無双状態だったに違いない吉田聡先生の爆発する才能が読者に凄まじい衝撃を与えた伝説的シリアス神回。それが『1/5 LONELY NIGHT』なのである。タイトルの回収もお見事としか言いようがない!

 

OVA版は、単行本11巻の後半を全て使って収録されていたこの『1/5 LONELY NIGHT』に、4巻収録の、これまた人気の恋バナ回『原沢くんの初恋』をドッキングし、7巻収録の『富士山ツーリング』や、湘爆が写真誌に激写される『ミンナ仲間』などを巧みに盛り込んで構成されている。

 

 

富士山ツーリングの帰り道、江口は雨の中でヤンキーにからまれていた女の子を助ける。
女の子、絵藤都志子(えとう としこ)は助けてくれた江口に一目ぼれ!彼女志願して江口を追っかけ始める。

 

 

しかしあの時、江口が一撃でシメたヤンキー、香山は実は湘爆のライバルチーム地獄の軍団のメンバー。そしてそのツレのトシユキが弄んだ元カノが都志子なのであった…

 

 

江口にやられたのを根に持った香山とトシユキは都志子を狙ってつきまとうが、取り返しのつかない「あるヤバい事件」を起こしてしまう。

 

 

自分たちのしでかしたことに恐怖で追い詰められた2人は総長の権田に「湘爆にやられた」と泣きつき、地獄の軍団に動いてもらおうと画策するが…

 

 

情緒あるアバンタイトルがいつもイカすOVA版湘爆だが、本作のそれは2本目にしてぶっちぎりでシリーズトップのすばらしさ。
嵐が去った朝の澄んだ空気の匂いまで伝わるような美しい風景ショット。
そして「なぜ湘爆のジャンパーがそこにあるのか?」が、ラストまで観るとわかる粋な作りにグッとくる。

 

 

2代目江口洋介役を襲名した塩沢兼人さんは、シリアスもコミカルも自由自在なさすがの頼もしい名演!

 

 

ケンカシーンの迫力は正直なところ原作に軍配が上がると思う。
しかしケンカだらけの原作の中でも突出した、ツッパリ漫画史上最恐であろう「戦慄のアキラのブチギレ大暴れ」はもちろん、瀬島たちと同じ顔で読者もみんな息を呑んで見守るしかなかった、あの異常とも言えるもの凄い「江口と権田の悲しいタイマン」に勝つのはどんなアニメ監督さんもきっと無理!

 

 

これはシリーズを通して言えることだが、ベテラン西沢信孝監督のケンカ演出はリアル志向というより、路上でジャイアントスイングをぶちかましたりするダイナミックなアクション的面白さ。
ときどきコミカルに振れすぎて賛否分かれる場合もあると思うが、ケンカ白帯の万年シャバ僧の私でも安心して観れる独特の明るさがあり、これはこれで個人的には好きである。

 

本作は後半で「原沢くんの初恋」パートに突入。
家の事情でやむを得ず去っていく彼女に原沢の想いを伝えるため、激しい嵐の中を湘爆が行く!
彼女が乗る電車に果たして追いつけるのか?そして想いを伝える方法は?

 

 

ただでさえ泣けるあの名編をOVAではさらにドラマチックにアレンジ!
江口と原沢のタンデムバイクを無事に行かせるため、強風で飛んでくる看板や倒木など次々襲いかかる障害を湘爆メンバーが身を犠牲にして防ぎ、バトンを託して1人づつ散っていくという胸爆熱展開がプラスされている。
仲間たちのおかげでついに追いついた江口のバイクが、エモーショナルな音楽と同時に『ET』ばりに「空を飛ぶ」瞬間、あなたの心もきっと舞い上がるような感動に包まれるだろう!

 

湘南グラフィティ 1 (ヒットコミックス)
少年画報社
湘爆のスピンオフ。全2巻。江口たちと同じ時代、場所で青春を過ごす、ツッパリではないフツー男子たちの日常