「機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争」 ガンダム初のOVA。宇宙世紀一泣けるビデオレター

■監督:高山文彦
■1989年
第1話 戦場までは何マイル?
第2話 茶色の瞳に映るもの
第3話 虹の果てには?
第4話 河を渡って木立を抜けて
第5話 嘘だと言ってよ、バーニィ
第6話 ポケットの中の戦争
(各話27分)

 

今はもう「宇宙世紀」という枠すらぶち壊して、ザクザク量産されまくり続けている機動戦士ガンダム。その、シリーズ初のOVA作品。

 

舞台は1年戦争末期のサイド6。
ニュータイプ専用に開発された新型ガンダム「アレックス」の奪取を命ぜられたジオン兵・バーニィと、11歳の少年・アルの交流を描く。

 

 

キャラクターデザインは「超時空要塞マクロス」でおなじみの美樹本晴彦さん。
「美樹本キャラ」ミーツ「ガンダム」!…というのが、当時まずはもうデカルチャーな大ニュースだった。
そして内容も、私なんぞが今さら言うまでもなく、期待を裏切らない素晴らしい完成度。

 

第1話が始まってすぐ。私のようなどこでもエースになれないニュータイプじゃない平凡人間にとって大変親しみのわくモビルスーツ・ジム!…が大変景気の良いやられキャラっぷりを披露しまくる派手な戦闘シーンがある。
ここで、ゴックが蛇腹構造の長い腕を重たいムチのように自在にウネウネと動かした瞬間。
また、銃撃を受け破損したジムの手がブランとぶら下がり、握られたマシンガンが四方八方に乱射され自らの機体を打ち抜いてしまう瞬間。
始まってわずか2分弱。ハッとするディテール満載のこの戦闘シーンでもう「ああ、この作品は気合が入ってるな」とハッキリわかる。
そしてこの作画クオリティーが全6話、けして落ちることはない。

 

「オネアミスの翼」で当時のアニメファンを熱狂の宇宙へぶち上げてくれた山賀博之さんの書いた脚本も、サスペンス、サプライズ、ロマンス、バトルなどなどをきちんと詰め込んであるドラマチックで見事なもの。次回への引きもバッチリ。きっと最終話まで一気に観てしまうだろう。

 

キャラ立ちも見事で魅力的。
タバコ、酒、女などで個性をキチンと描き分けられたサイクロプス隊のメンバーたちのベテラン軍人のカッコ良さと壮絶な死にざま。
浪川大輔さんがホントにチビッ子の頃に演じた幼い声がインパクト大なアルの少年らしい一途さ。
美樹本晴彦さんの麗しキャラデザイン力と林原めぐみ力がスパークしまくったクリスのとてつもない「憧れの隣のキレイなお姉さん」感。

 

 

そして個人的には何といってもバーニィである。ニュータイプではなく平凡なパイロット、普通の兄ちゃんなのが良かった。
スーパーマンではなく、恐れ、見栄をはり、葛藤し、キチンと逃げる。そして戻り、自分を兄のように慕ってくれたアルに、精いっぱいの勇気、意地、優しさを命をかけて見せる。そこが良かった。ビデオレターにも涙。間違いなく宇宙世紀一泣けるビデオレターだろう。

 

 

クリスマスにやってくるクライマックスには「ガンダムVSエルメス」にも匹敵する哀しい一騎討ちが待っている。
すべてが終わり、6回目に聞く椎名恵さんのエンディング曲「遠い記憶」は、憧れを抱いていた戦争の残酷さ哀しさをアルが知ってしまったように、それまでとは違った重みをもって心に響くだろう。

 

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