■監督:川尻善昭
■2作とも1989年
■Ⅰ 51分
■Ⅱ 53分
寺沢武一先生の作品との出会いは、私の場合『コブラ』であった。
私が小学校3年生の時に、父が脱サラして小さな食堂を始めた。
そこの雑誌コーナーに置いてあった週刊少年ジャンプの中で、あの宇宙海賊が星から星へ飛び回り、絶賛大暴れ中だったのである。
以前に他のコラムでも書かせて頂いたが、飯島愛さんより早くTバックなるものを着用していた、露出度高すぎの、アメコミタッチの外人さんプロポーションのヒロインたちにドキドキ!
左腕の仕込み銃・サイコ・ガンをはじめとする、めくるめくSFガジェット、設定の数々にワクワク!
ミッキー・スピレーンも頬を染めそうな、ハードボイルド&キザなセリフが飛び交い、本格SFの香り漂う、少年ジャンプの中では異彩を放つ大人っぽい作品世界を夢中で背伸びしてのぞきこみ「サイコ・ガンって実は寿命があって、何発か撃つと壊れるらしいで!」とか「コブラって過去を消すために整形手術しとって、昔はホンマは ぶちハンサムじゃったらしいで!」など、コブラごっこしながらチビッ子宇宙海賊仲間たちとワクワクしゃべりまくったものである。
そんな『コブラ』のサイコ・ガンにも負けぬ、魅惑のワクワクガジェット『神の目』を左に持つ男!
寺沢先生が生んだもう一人のヒーロー。
それが『ゴクウ』だ。
世界中のコンピューターに繋がっており、のぞきから人工衛星の操作まで、何でも可能、お見通しな端末『神の目』。
ある日、何者かによって、このお釈迦様もビックリの万能ガジェットを左目に埋め込まれた探偵・風林寺悟空が、どんなピンチでもコブラにも負けぬキザなセリフを吐き、如意棒を片手に数々の事件に挑む、SFハードボイルドアクションだ。
そして、その事件簿の中から2つのエピソードを、神OVA『妖獣都市』の川尻善昭監督がアニメ化!
寺沢ワールドと川尻ワールドの相性は、もうリリース前からみんな感じてた通り、期待通りバッチリ!
日本アニメーション美術界の至宝、男鹿和雄(おが かずお)さんが描き出した、目もくらむような東京シティを!
青と赤が大胆にチェンジする独特の川尻カラーが妖艶に彩り!
ちょいちょいオッパイもんだりもまれたり、原作以上のサービスを魅せてくれる美女たちからの依頼を受け!
イメージピッタリのシブいハードボイルド声で松田重治(まつだしげはる)さんが演じるゴクウが「地獄のエンマも貴様の非道ぶりには舌をまくぜ」とか、キザかっちょいい名セリフをバンバン決めつつ、知力、体力、左目の視力を駆使して悪を討ち!
そのアクションシーンでは、画面がピカチュウもビックリするぐらいビカビカ光る必殺の川尻フラッシュも惜しみなく炸裂し!
しょーもないタイアップで世界観を壊したりしない、作品にふさわしいエンディングテーマ「Fighting In The Danger」の歌唱に、気高くワイルドな邦楽界の孤高のボヘミアン・葛城ユキさんを起用し!
そして歌に合わせて表示されるスタッフロールの、こだわりのフォントデザインに思わずニヤリ!ラストまでまったくぬかりなし!
2作とも「さすが川尻監督!」と言うしかない、堂々たる完成度。
この作品の隙を見つけるのは神の目でも無理!
- オススメ度…Ⅰ 90/100 Ⅱ 89/100
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※追記(2023年9月12日)
『コブラ』や『ゴクウ』などのオンリー1なマンガ作品で本格SFハードボイルドの魅力を教えてくださった寺沢武一先生のご冥福をお祈りいたします。