■監督:安彦良和
■1987年
■60分
少女マンガ界に咲き誇りし最大の花。紅あかと燃えさかる紅蓮の炎。
竹宮恵子先生の代表作のOVA化である。
「風と木の詩」というと、未読の方は「ああ、なんかよく知らんけど、BLモノなんでしょ?」とおっしゃるかもしれない。
NON!
確かに美少年同士のセックスは描かれるが、別にオカズ用じゃない。そういうBLモノではない。
描かれるのは、残酷な世界によって体と心に穴を穿たれた者の孤独。魂をかけて人を愛することの厳しさ、美しさ。追い求めた半身とついに一つになれた喜び、喪失の哀しみ。イバラの森を裸身で駆け抜けるような痛みに満ちた、血まみれの壮絶な愛の物語なのだ。
このOVAが発表された時、某アニメ誌に「男同士の性描写なのにすごくエロい」というような書かれ方をした記事が載っていた。
すごくエロいかどうかはともかく、すごく美しい。
上映時間60分、キャラクターたちの麗しさが崩れることは一瞬たりともない。しかもよく動く。驚異的な作画のクオリティーだ。
それもそのはず、土器手司さん、本橋秀之さん、大貫健一さんなど、超一流のアニメーターの方々が原画を担当されており、そして監督&絵コンテはなんとあの安彦良和さんなのである!
「そうか…安彦さんともなると、こういうまったく違う絵柄の作品もできるのか…」と思って観てたら、ワッツ先生とオーギュだけは思いっきり「安彦キャラ」にメタモルフォーゼしていた。2人が出ると19世紀のフランスが一瞬、宇宙世紀のサイド6に見え、私だけちょっと楽しかった。
キャスティングも個人的にはイメージにピッタリ!
主人公のセルジュの声は小原乃梨子さんなのだが、さすがの見事な美少年演技で、のび太の顔はまったくチラつかない!賢く誠実で優しい、あの「みんな大好きセルジュ」である。
オーギュの塩沢兼人さん、ロスマリネの榊原良子さんなども完璧なハマリ方だと思う。
その麗しいキャラクターたちを包む音楽や背景も最高だ。
さように非常にハイクオリティな作品ではあるが、やはりあの長い物語を60分に収めるのはそりゃ誰だって無理ってもの。セルジュがみずからの青春のありし日を回想するダイジェスト版のような作りになっており、基本的にはやはり原作ファン向けのOVAかもしれない。
「この感じで2時間ぐらいの映画…あるいはテレビシリーズで観たかった!」と思った方も多いのではないだろうか?
- オススメ度…80/100(ファンなら)
- 無料動画の配信…Youtube
- 有料動画の配信…なし
- ソフトのレンタル…なし
- ソフトの販売…中古のVHSのみ