■監督:さき まくら
■1988年
■50分
原作は、マンガ界の絶対王者・高橋留美子先生。
パンチは強いが意志が弱く、試合前なのに相撲取りもビックリのドカ食いをぶちかまし、減量に失敗してばかりいるボクサーと、敬虔なシスターとの恋模様を描いたラブコメボクシング漫画。
80年代に小学館の『ヤングサンデー』で不定期連載が始まり、確か巻頭カラーページに、当時のWBC世界スーパーバンダム級チャンピオンだった畑中清司さんと高橋留美子先生の対談が掲載されていたと思う。
主人公「畑中耕作」の名字は、おそらくそこから来ているのだろう。
青年誌に掲載のボクシング漫画にありがちな、壮絶!過酷!悲壮!…などなどの要素はほぼ皆無。
主人公の耕作は「減量」という重い十字架を背負いつつも ひたすらピュア&おバカな陽性キャラ。
ついつい食べ物のニオイにフラフラと引き寄せられ、減量中の力石に見つかったら強烈なアッパーカット喰らいそうな ひどい大食い盗み食いをしてしまうというのが、毎回のお約束ギャグ。
また、その耕作が惚れる生真面目な性格のシスター・アンジェラが、たまに修道服の頭巾をはずして髪を見せたり、水着になってくださったりするのだが、るーみっくわーるどのヒロインらしい さわやかなお色気があり胸キュン。耕作ならずともノックアウト必至。
…と、このように「ボクシングもの」というよりも、どちらかといえば「ラブコメ」よりの作品で、安心して楽しく読める。
そして、以前インタビューで「ハッピーエンドを描いていきたい」と言っておられた留美子先生のお言葉通り、祝福感に満ちたラストに初めての掲載から20年かけて着地。ご自身が生んだキャラクターに対する聖母マリア様のような深い愛を感じた。
全4巻なので、未読の方はぜひ。
ところで原作は、いくつか試合が行われ、耕作が何だかんだで最終的には東洋太平洋チャンピオンにまで上りつめる。
このアニメ版では試合を一つに絞り、1ラウンド50分という枠が多かったOVAの制限時間の中で、ストーリーを非常にうまくまとめている。
音楽は川井憲次さん、美術は小林七郎さん、声優として古谷徹さん、塩沢兼人さんなどなど、スタッフ&演者の皆さんも強力。
そしてヒロインのシスター・アンジェラを演じられたのは、永遠のお姉さま声優・鶴ひろみさん。
凛としたお声と、原作にはなかった赤いスクーターを全開バリバリでぶっ飛ばすお姿にギャップ萌え全開!
また、「止め絵」や「キラキラ光るゲロ」など、思わずニヤリな演出が随所に炸裂!
「おお~!さすが!題材がボクシングだけに、『あしたのジョー』の出崎演出オマージュか~!粋じゃのう~!」と喜んでたら、監督のさき まくらさんとは、出崎統(でざき おさむ)さんの別名とのこと。
つまりオマージュじゃなくて本家本元、正真正銘、伝家の宝刀なのであった。そりゃトリプルクロスばりにビシッと決まるはずだ!