■監督:西久保瑞穂
■1985年
■75分
《ビッグコミックスピリッツ》に連載され、ヤングアダルトな世代の読者たちに症候群を引き起こした、たがみよしひさ先生の大ヒット作のOVA化。
金に困り、東京を後にして軽井沢に移り住んだフリーカメラマンの耕平と、彼を取り巻く個性豊かなキャラクターたちの人間模様を描く。
このOVAにはなんと、3つの異なるバージョンが存在する。
■実写併用版
最初にリリースされたもの。
ジャケットに踊る「ANIME&LIVE VIDEOGRAPHY」という文字通り、主に濡れ場で実写シーンが挿入されるというアバンギャルドな作り!
■全編アニメ版
実写併用版の翌年リリース。実写シーンを、新作アニメカットに差し替えたもの。
■DVD版
実写併用版の実写シーンを削除したもの。
私は未見なのですが、なぜか削除シーンの差し替えなどもしていないため、当然上映時間は短く、シーンの繫がりがどうも不自然らしい。
もしそれが本当であれば、永き時を経てのせっかくのDVD化だったのにちょっと残念かも。
最初のバージョンがリリースされた時のこと。
「軽井沢シンドロームのOVAは、エロシーンで実写になるらしい!むちゃくちゃエロ過ぎて18禁らしい!OVAというよりOAVらしい!」というウワサが流れてビンビンに大騒ぎになった。ワシは超然としていたがワシ以外のワシ界隈で!
実際は、確かに女優さんたちが景気よくバンバン脱いではくださるものの、AVほどではない。もちろん18禁でもない。
若い方にもわかりやすく説明すると『杉浦美幸のストロベリータイムス』以上、『葉山レイコの処女宮』未満ぐらいである。
ただ、無修正動画が小学生でも簡単に観れてしまう昨今とは違う80年代。
「好きなタイプは?」と聞かれて「麗夢たん!」とか「朝霧陽子たん!」とか、芸能人じゃなくてアニメヒロインたちの名前が炸裂する、ワシは断じて違うがワシ以外のワシ界隈のアイアンチェリーたちが、愛するOVAというジャンルに突然、実写エロを突っこまれてソワソワしたのは無理もない。
そして、3つのバージョンのうち、この斬新な試みがなされた実写併用版が、個人的にはやはり一番面白いと思う。
ちなみにその実写シーンには、小野みゆきさんや水島裕子さんなど、人気女優の皆さんが出演。特に薫を演じた中村れい子さんは雰囲気ソックリ!
撮影は邦画ファンならご存じ、なんとあの仙元誠三さん!
美術は、近年タランティーノ作品でも大活躍の種田洋平さんという豪華さである。
もちろんアニメシーンも負けていない。
小山田いく先生しか真似できなそうな、たがみ先生のあの独特な絵を、奥田万つ里さんや谷口守奏さんなどの強力作画スタッフが見事に再現。
シリアス8頭身からギャグ頭身にポヨヨンと瞬間チェンジする「たがみデフォルメ」も完璧。
随所に見られる、ストップモーションと共にイラストに変わる出崎ゆずりな演出もリリカルで効果的だ。
そして終盤。
「ある重要な話」をなかなか切り出せずにいるヒロインの薫に対し、実はすべてをくみ取っていた耕平が、塩沢兼人さんのあのお声でキザで優しいセリフを放った瞬間、雲間から差した光が2人の顔を照らすシーンは、本作の白眉。
2人の心にも晴れ間が広がり、暖かさで満たされていくのが伝わる美しい演出で、原作越えだと思った。さすが『街角のメルヘン』を監督した西久保瑞穂さんである。
…と、このように非常に見応えのある作品ではあるが、実を言うと、これは大変失礼ながら原作もなのですが、個人的にはちょっとモヤモヤするところもありました。
東京から逃げ出し、軽井沢へ向かう道中、荒っぽい運転で車に追突したにもかかわらず、逆に恫喝してごまかして逃げ、着いた軽井沢では親友の姉の住まいに快適に居候し、その親友を、よく聞くとシャレにならん辛辣な言葉で笑いおちょくり、女性キャラたちすべてに惚れられまくり、とっかえひっかえやりまくり、中の一人が妊娠&流産しても放置して他の女とやりまくり、キザなセリフを吐きまくり、元暴走族のアタマでケンカも強く、ジープをワイルドに乗り回す耕平という主人公に、私はどうも乗り切れなかったのである。
別にモテない男のひがみではない!断じて!
だいたい、あの女性キャラたちも、やってることが人間的にムチャクチャな耕平をなぜゆるゆると許すのか?顔が良くてセックスがうまけりゃいいのか?
失礼ながら彼女たちもあまりワシのタイプではない。
ワシの好きなタイプは…そう!麗夢たんとか!朝霧陽子たんとか!