■監督:うえだひでひと
■1990年
■全6巻 各巻30分(今回も姫野美智さんによるジャケ絵が美しい!)
荒木飛呂彦先生は「ジャンプでは照れてやってはいけないということを、車田正美先生から学んだ」と言っておられた。
車田正美先生の凄いところは、チビッ子がワクワク考えた妄想のような世界を、おいくつになられても照れずに堂々とまっすぐにやりきるところだと思う。
「もう大人なんだから、ちょっと小難しい、文学的な要素を…」とかしゃらくせえことは一切考えない!
風呂敷のマントと丸めた新聞紙の剣を装備し、ブロック塀から「とうっ!」とジャンプしてチャンバラヒーローごっこに夢中になってるような少年魂をおいくつになられてもけっして失わない。
黄金期の少年ジャンプで常に読者のハートをガッチリとつかみ続けることができたのも、さもありなん。
そんな偉大なる永遠の少年、車田正美先生のお言葉を、ジャンプコミックス名物「表紙カバー折り返しの著者近影&コメント欄」から少し抜粋させて頂こう。
どこのどいつだ!まったくだ!転売ヤ―とかに聞かせてやりてえぜ!
そうだったのか!
過去の「恥」を突然思い出しては満員電車の中で頭を抱えて「ひょえああっ!」と奇声をあげ、半径2メートルぐらいガラガラにしてしまう人生でしたが、要は「恥」なんてものは人の目から絶対に隠し通せばよいのだ!
ん?待てよ…人に目撃されたからこそ「恥」なのではないか?ひょえああっ!
よーし!
主人公の必殺技をくらって「ドシャアッ!」と車田落ちしてるザコキャラみたいな非モテな私ですが、明日からはガクランに木刀の熱血小次郎コーデで「ザシャアッ!」と出社し、何か仕事に取りかかるたびに「ギャラクティカ・伝票整理!」とか「ウイニング・ザ・台車集め!」とか叫ぶことにするゾ!そうすりゃ、黙ってても女の方からよってくらあ!
ん?待てよ…ぜんぜん黙ってない。叫んでる。ドシャアッ!
まったくだ!私も明日からは「スパークリング・オレンジの香り」とかなんとかしゃらくせえことが書いてある香水なんか一切つけない!
でも加齢臭も気になるお年頃!石けんだけでは抑えきれない!
試行錯誤の結果、もう一切人には会わない!
…と、このように、ご本人が描いておられる作品の熱血少年主人公そのまんまのようなイカす車田正美先生。
今回紹介させて頂くこのOVA版『風魔の小次郎』の第2弾となるシリーズは、「夜叉篇」に続いて車田先生の作家性にさらにブーストがかかったガクラン忍法帖チャンバラバトル篇こと「聖剣戦争篇」を、原作にほぼ忠実にアニメ化。
夜叉一族との死闘を終え、生まれ育った風魔の里に戻ってきた小次郎たち。
しかしそこで彼らが目撃したものは…
何者かの襲撃により、無残に壊滅した故郷の姿であった!
奴らの名は華悪崇(カオス)!
この暴走族みたいな名を持つ恐るべき新たなる敵は、太古の昔、神が作った10本の聖剣をすべて手中に収め、大地を支配すべく胎動を始めたのだ。
かくして、4千年の長きに渡り輪廻転生を繰り返しながら戦い続けてきた選ばれし男たちの聖剣戦争の幕が上がる!
やはり、このハッタリが効きまくった壮大なスケール感の世界の中でキャラクターたちが全員「学校の制服着用」というのがイイ!
『バビル二世』や『ジョジョの奇妙な冒険』第三部の承太郎もそうだが、あえて「制服」というのが、なんか何とも言えずカッチョよくて、そこにシビれるあこがれるゥではないか。
本作では小次郎たちはもちろん敵キャラも、そしてカリン塔ぐらい高い白霊山のてっぺんに太古の昔からずっと眠っていた戦士とそれを守ってきた謎の美女までガクラン&セーラー服!
イカす。
やはり少年マンガはこうでなくっちゃ!
「太古の昔からカンコー学生服はあったのか?」とかなんとか小難しい小理屈なんか言うヤツはドシャアされろ!
ちなみにこの太古の戦士・死牙馬(シグマと読む!)のくだり、OVA版では「制服で眠ってるのはさすがに変」という判断だったのか、マッパで眠っており、目覚めた後にやっぱり制服蒸着というやっぱり素敵に変なシーンになっておりイカす。
正体不明キャラはシルエットで現れ、目がビカッと光る車田演出もアニメで再現されておりニヤリ!
アゴが四角いブサイクキャラはもちろん瞬殺!
そして美しいキャラクターたちが、神に定められた「ちょっとビックリするような素敵に強引なルール」にのっとり、少年マンガ名物「トーナメント方式」で順番にバトる様を「夜叉篇」以上にキッチリたっぷり楽しめる、男子も女子も腐女子の方々も、みんな歓喜に車田泣き必至の眼福アニメになっている。
ところどころに使われる出崎演出ばりの止め絵カットも劇的で効果的!
ゴチャゴチャ言うとりますが、結局のところ「選ばれし戦士が、ガクランで、秘密の力を秘めた聖剣を手にして戦う!」
これで抱きしめた心の小宇宙が熱く燃えない人間はこの宇宙にはいない!
車田先生必殺の「見開きページ」のケレン味の凄さは原作にはちょっと及ばないかもしれないが、間違いなく楽しめます!