『DOUGRAM vs ROUND-FACER』真実は見えるか?Not even justice,I want to get truth!

■監督:高松信司
■1987年
■3分

 

私のような酸いも甘いも嚙み分けた大人の男は、夕暮れ時の街を一人歩きつつ、ふとこう思うことがある。
「ボトムズって…テレビアニメであの企画、よく通ったのう…」と。
そして、高橋良輔監督の前作『太陽の牙ダグラム』にも、同じことを時々ふと思う。

 

 

そう!
架空の植民惑星デロイアの独立戦争を描いたこの作品、学校が終わったチビッ子の魅惑のワクワクタイム「夕方」に放送されたロボットアニメにも関わらず、なんだかやたらと政治ドラマ色の濃ゆい、大人っぺえ内容だったのである。
だいたい主人公が植民惑星の独立を目指すゲリラグループの一員て。
大人っぺえ~!「ええモン」が地球に侵略してきた「わるモン」をこてんぱんにやっつけるスーパーロボットものと全然ちゃう。

 

しかし、この『太陽の牙ダグラム』、そんな内容にも関わらず、打ち切りされたりすることもなく、何と「全75話」の長きに渡り放送されキッチリと終結。
大人のアニメファンはもちろん「ワシはこの大人っぺえストーリーを理解しとる大人なんよ」と背伸びしたいチビッ子の人気も獲得していたのではないかと思う。

 

かく言う私はインテリの兄の影響を受けてませていたので、この「ええモン」「わるモン」だけで単純に語ることのできぬ大人の人間ドラマを、特に背伸びすることもなく「クリンはええモン…ラコックはわるモン…」と普通に観ることができていた。つまりほとんどわかっていなかった。「深く理解しよう」とちょっとぐらい背伸びするべきであった。
もちろん予告でいつもシャウトされるあの英語「Not even justice,I want to get truth!」もわからなかった。そしてそう!もちろん今もよくわからない!
「正義じゃなくて、真実が知りたい!」というような意味なのだろうか?特に途中にブッこまれてる「even」はいったいどう訳せばいいのか?真実が知りたい!

 

しかし、今でも語り草のあの第一話のファーストシーンは衝撃であった。
有名なので言ってしまうが、この作品、荒野で朽ち果て、まるで遺跡のように眠る主役ロボ「ダグラム」を劇中の「ある人物」が訪れるシーンで始まるのである。
「ダグラム」と言えばこの絵!本作を未見の若い方も、チラリどこかで見たことがあるかもしれない。
つまり、これから長く続く予定のテレビシリーズで「ラストはこうなる!」ということが既に決まっており、その絵を最初にバーン!と持ってきたのである。

 

 

この演出は衝撃だった。シブさに痺れた。
見てない友だちに「ダグラムってのう…なんと!最初に最終回の絵が出てくるんで!あんな長いのに始まった時点でもう最後が決まっとったんで!それを最初に出したんで!すごいじゃろ!」と、この衝撃を熱く語りまくって、今から観る人の衝撃を減らしまくってしまったものである。

 

それともう一つ、強烈に覚えていることがある。
今は亡き母は、私が勉強そっちのけでアニメやファミコンに夢中でテレビにかじりついていると、あまりいい顔をしない昭和ママだった。
しかしある日の夕方。この『太陽の牙ダグラム』を見ていた時のこと。
話は最終回のひとつ前。ワシ界隈では「上司にしたいアニメキャラナンバー1」のサマリン博士が戦いの終結のため、命を賭して双方を説得するという、太陽の牙メンバーと同じく視聴者も号泣必至の神回である。

 

 

博士の勇気ある行動と言葉、そして死に私がむせび泣いていると、たまたま後ろで編み物かなんかしていた母も、手を止め、目に涙をプルプルいっぱいためながら画面を食い入るように見つめているではないか!
そしてエンディングが♪ルルル~♪と終わったところで私にこう言ったのである。
「スエ、この次の回、ビデオに録っといてくれん?」
母のこういう反応は珍しかったので強烈に覚えている。
今までのストーリーをよく知らない大人のハートにも、この太陽の牙は深く刺さったのだ。そのぐらいのパワーを持つ作品だったのだと思う。

 

そんなこんなで私も夢中で観て、プラモも作り、劇場版『ドキュメント 太陽の牙ダグラム』も観に行った。『ザブングルグラフティ―』『チョロQダグラム』と同時上映という豪華極まりない3本立てであった。

 

 

そしてこの作品『DOUGRAM vs ROUND-FACER』である。
実は作られた当時、私は観ていない。
ちょいと前、久しぶりに『ドキュメント 太陽の牙ダグラム』が観たくなり、TSUTAYAのDVD宅配レンタルで借りた際、特典として巻末にこの作品がついていたのである。
度肝を抜かれた。なんじゃこりゃ???

 

ストーリーはない。本編で活躍したコンバットアーマー、ダグラムとラウンドフェイサーが戦うだけの3分弱の作品。
しかし!
なぜか2体ともスコープドッグみたいにローラーダッシュをし!
バビーンと空を飛びなんとそのまま宇宙へ!
ラウンドフェイサーはグフいヒートロッド的なモノを繰り出してダグラムを縛りあげ!
何とかぬけだしてラウンドフェイサーをやっつけたダグラムが妙にカッチョいいポーズを決めたところで唐突に終わり。
…と思ったらまた始まり、今度はもう都市の上空をダグラムがレイズナーぐらいギュンギュン飛んでおり!(しかもカットによって昼になったり夜になったりする)
謎の巨大UFOを撃破してまたも唐突に終わり。

 

 

度肝を抜かれた。なんじゃこりゃ???
僕らの知ってる、母も泣かせたダグラムと全然ちゃう!
コンバットアーマーのあの戦車のような重厚さ、地形や気候に合わせ迷彩や防寒対策まで施されていたリアルな兵器感は皆無。

 

「なんじゃこりゃ???」と調べてみたところ、この作品は当時VHDという形式で発売されていたビデオマガジン『アニメビジョン』の第7号に収録されていた短編作品とのこと。

 

 

作画自体は素晴らしいし、ファンにはある意味面白いのだが、それにしてもなぜこんなヘンテコな内容になったのだろう?真実が知りたい!
Not even justice,I want to get truth!

 

 

  • オススメ度…65/100(ファンにとってはある意味おもしろいかも)
  • 無料動画の配信…Youtube
  • 有料動画の配信…なし
  • ソフトのレンタル…TSUTAYA DMM.com ぽすれん ゲオ
  • ソフトの販売…『太陽の牙 ダグラム THE MOVIE COLLECTION DVD』に特典として収録