『ペリカンロード クラブ・カルーチャ』あの『湘爆』とデッドヒートを続けた80年代青春バイクマンガのトップ!

■監督:山本暎一
■1986年
■55分

 

《少年KING》に連載され、同誌に同時に連載中だった吉田聡先生のあの『湘南爆走族』とデッドヒートを繰り広げ続けた80年代青春バイクマンガのトップ!
それが五十嵐浩一先生の『ペリカンロード』である。

 

親や周囲の期待通りに優等生ロードを歩き続けてきたことに不満を抱いたガリ勉主人公、渡辺憲一。
彼が密かにバイクに乗るようになったことで、居候のお姉さんライダーへの恋、暴走族との抗争、そこから抜けた友人とのチームの結成などなど…今までの道では出会うことのなかった様々な出来事に巻き込まれていく。

 

 

『湘南爆走族』や『ビー・バップ・ハイスクール』の大ヒットにより「後に続け」と山ほど生まれ、人気獲得の抗争を繰り広げたヤンキーマンガや暴走族マンガ。
この『ペリカンロード』もそっち系の作品と思われるかもしれないが、実はぜんぜん違う。
本作の主人公は、本当に最後まで普通の優等生な少年である。
バイクに乗るようになったからといって「なんちゃってヤンキー」として高校デビューしたりするワケではない。
「実はキレたらケンカが鬼のように強かった!」とか、ありがちな秘められたアビリティもない。
普通にテスト勉強をし、予備校にも通い、バイトもし、進路や恋や友情に悩む。
なりゆきで結成することになったチーム《カルーチャ》も暴走族ではなく、走ることが好きな連中のクラブ的な集まりである。

 

「不良だけど実は筋の通ったいい人!」的なキャラが登場する多くのヤンキー作品軍団にふれると「周りの不良にこんな人間的にデキたヤツいなかったゾ。集団で人の恐怖心につけこむような連中ばっかだったゾ。」と何だか違和感を感じてしまう私のようなゴリゴリのシャバ僧でも『ペリカンロード』には乗れたのは、そのためだと思う。
主人公は、他のチームやスケバングループとの抗争に巻き込まれたりもするが、そんなシーンも作品序盤では、基本的にホンワカギャグムードが漂う。

 

しかし、中盤に描かれるライバルチーム《フェルト・ヘルン・ハレ》と在日アーミーを親に持つ外人不良少年たちとの抗争は『湘爆』でたまにあるシリアス回とタイマンはれるぐらいハードで読み応え満点。
《キングクリムゾン》の名曲『スターレス』の歌詞を引用して語られる、あるキャラクターの最後も神聖で深い印象を残す。

 

OVA版は、そんなハード展開が訪れる前、全14巻のうち2巻の《クラブ・カルーチャ》結成までを『哀しみのベラドンナ』のベテラン山本暎一さん監督で描いた、さわやか青春グラフィティになっている。

 

 

80年代に音楽シーンを席巻したボーイ・ジョージ率いる《カルチャー・クラブ》ならぬ《クラブ・カルーチャ》というチーム名。
怖いスケバングループも逃げ出す「その名の由来」とは?
ぜひ、原作およびOVAを観て確かめよう!

 

 

  • オススメ度…59/100
  • 無料動画の配信…Youtube
  • 有料動画の配信…なし
  • ソフトのレンタル…なし
  • ソフトの販売…中古のVHS