『ピンクのカーテン』ぜひのぞいて見てほしい、ジョージ秋山先生のセクシー哲学マンガのOVA!

■監督:倉橋達治
■1987年
■30分

 

私がジョージ秋山先生の世界を初体験したのは、チビッ子の頃に週刊少年ジャンプで始まった『シャカの息子』だった。
田舎の村に突如蔓延した「ツツガムシ病」。
恐るべきパンデミックから救われるべく、フラフラの体でお百度参りを始める村人たち。
騒動の影に暗躍する謎のカリスマ青年…
そして初めてUFO見た時ぐらい総読者ポカン顔まちがいなしの唐突かつ衝撃のラスト…

 

 

同時期に連載されていた『アラレちゃん』や『キックオフ』などとは、明らかに話も絵も何もかも異質すぎる作風に、ワシ界隈のチビッ子たちは「なんか…ジャンプで変なマンガが始まったのう…ほいで…すぐ終わったのう…」と、みんなとまどっていた。
その後に始まった、無人島に漂着した真っ黒な二頭身の土人ちゃんが、人喰いウツボの大群や巨大ザメなんかと力いっぱいアチョブ『海人ゴンズイ』にいたっては言わずもがなである。

 

 

両作とも全2巻と短めなので、おそらく打ち切りだったのだと思う。
しかしチビッ子の頃から暗黒趣味があった私は、マンガチックな絵柄の中に巨大な狂気や禍々しさをはらんだような独特の作風に抗いがたい魅力を感じ、夢中で読んでいた。

 

そしてその後も、いわゆる熱狂的なジョージマニアとまではいかなくても、様々な作品を手に取った。
ラストの切ない妄想シーンで号泣必至の『銭ゲバ』。
「この作品が読めて、生まれてきてよかったギャア!」と思った『アシュラ』。
鬼頭莫宏先生の鬱巨大ロボ漫『ぼくらの』の偉大なイメージソース『ザ・ムーン』。
演歌歌手になる前の長山洋子さんと大映ドラマ番長・松村雄基さんが夫婦を演じた実写映画版も「明るい極妻」に仕上がっててなかなか胸キュン度高めだった『恋子の毎日』。
ビートたけしさんのとぼけた雰囲気が意外にハマり、時々見せてくださる豪快な殺陣がめっちゃカッチョよかった実写ドラマ版も忘れがたい『浮浪雲』などなど…
どの作品も、他の誰にも描けない、オンリー1な、問答無用の面白さだった。

 

『ピンクのカーテン』は、そんな多作な鬼才、ジョージ秋山先生の代表作の一つだ。
美しく成長したお色気ムンムンな妹と狭い部屋で同居することになってしまった兄。
実の妹への禁じられた性欲や、彼の周りのセックスに振り回される人々の姿を描くことで「性と愛」の問題について、近親相姦を軸に奥まで深く突っ込みまくっていく、毎回タイトルが般若心経の文字から取られているのもダテじゃない、セクシー哲学マンガである。

 

しかしもちろん小難しくはない。
服着てるコマのほうが少ない、ほとんど室内裸族な妹・野理子にドキドキ。
「お兄ちゃんまさか実の妹をヤルの?ヤラないの?」サスペンスにハラハラ。
さすがジョージ秋山先生、とにかく面白くグイグイ読める。
大ヒットして、美保純さん主演で映画化。
名作の多い日活ロマンポルノの中でもズバ抜けて高くそそり立つ金字塔的な1本となった。

 

 

この作品で妹を演じた美保純さんの可愛さといったら、もう!
私は直撃世代からはちょっとズレているのだが、当時「美保純さんの出現に日本中がどよめいた」というのは確かにホントだろうなと深く納得。劇中のお兄ちゃん同様、クラクラしまくることまちがいなしである!

 

 

そして今回、紹介させて頂くこのOVA版。
正式なタイトルは『オリジナル・アダルトアニメ ピンクのカーテン』。
日活ロマンポルノ同様に18禁作品である。
当時、ビデオレンタル屋のピンクのカーテンの向こうがわに置いてあり、なかなかのぞくのが難しかった。

 

 

「30分」という短めの作品で、ストーリーは正直「ドラマが展開し始める前の序章」といったところ。
しかし、ジョージ先生のあの独特の絵を、名作アニメ映画版『浮浪雲』にも負けぬほどの高クオリティで再現。
あやうい関係の兄妹が一つ屋根の下で暮らす80年代の東京の風景も非常に美しい。

 

 

原作で印象的な、抽象的かつ大胆なセックスの表現も果敢にチャレンジ。
妹の肉体への突撃をギリギリのところで踏みとどまっているダメ兄の背中をドンと押すゲスメフィストにして恐るべき近親相姦の常習者、喜久男の禍々しさもチラ見せされ、原作同様おそろしい。

 

 

そして80年代に性春を過ごした男ならその名を忘れる者など存在しない、あの偉大なる元祖AVクイーン・小林ひとみさんが妹の野理子の声を熱艶。挿入歌と主題歌も熱唱。
この2曲は、ジョージ秋山先生と、あの永遠のフェロモン作家・伊集院静先生が作詞を手がけた豪華なものである。

 

 

このように短いながらも見どころマン載。
このピンクのカーテン。
未経験の方は原作&実写映画ともども、ぜひのぞいて見て欲しい。

 

 

  • オススメ度…58/100
  • 無料動画の配信…MUCHOHENTAI
  • 有料動画の配信…なし
  • ソフトのレンタル…なし
  • ソフトの販売…中古のVHSがたまに

 

※数々の大切な名作を残してくださったジョージ秋山先生のご冥福を心よりお祈りいたします。