「蒼き流星SPTレイズナー ACT-Ⅲ 刻印2000」 80年代ロボットアニメ界に起きた《ある事件》とは?

■監督:高橋良輔
■1986年
■56分

 

なぜいきなり「ACTⅢ」だけの紹介なのか?
「レイズナー」をまったく知らない方に、このOVAを観て頂くためには少し説明が必要だ。
このブログを訪れてくださったイカす若いアニメファンの方には「めんどくせー」と思われてしまうかもしれない。しかし5分だけわがままをそっと言わせて。

 

時は80年代。「蒼き流星SPTレイズナー」の登場は衝撃だった。
ハイクオリティな作画で繰り広げられるカッチョいいロボットバトル。
誰もが「絶対ワシだけは味方をしてあげたい!」と思う、主人公エイジの好感度が宇宙服を着て歩いてるようなナイスガイっぷり。
そのエイジや、キャラ立ち完璧なキャラクターたちが生み出す人間ドラマ。
誰もが「このクソ野郎!ロボットに乗って踏みつぶしてやりたい!」と思う、ゴステロの日本アニメ史に残る名悪役っぷり。
レイズナー名物「オープニングの途中にブッこまれる、その日のハイライト」のワクワク。
敵であるグラドスと地球、エイジの乗るレイズナーには、どうやら何かとんでもない秘密があるらしい…というミステリーな謎展開。
そしてついに「彼」がその正体をあらわした時の衝撃たるや!!!!!

 

もうワタシャ夢中で見ていた。
放送時間はたしか毎週木曜夕方の5時半。
みんな「恋だ!部活だ!部室セックスだ!」と性春にウツツを抜かしてる中、私は1人「レイズナー」を観るため、家へのロンリーウェイをメロスのようにひた走った。これはまあまあ秘密だが「レイズナー」の前の「魔法のスターマジカルエミ」もかかさず観ていた。
これほど先の展開が楽しみで、放送が待ち遠しいロボットアニメの登場は久しぶりだった。

 

 

しかし!ここでとんでもない悲劇な《ある事件》が起こる!
「プラモの売り上げが悪い」という理由で、バンダイさんがスポンサーを降りてしまい、番組の「打ち切り」が決定したのである!ガーン!
面白さV-MAXの時のこの発表。ガガーン!

 

その当時の年末ぐらいに出た「アニメージュ」誌上で、「今年のアニメ界の重大事件」の読者アンケートの発表をするコーナーがあった。
そこで「レイズナーの打ち切り」と書いていた方がどれだけ多かったことか!本当にショックだった。

 

打ち切りのため、最終回はエヴァやイデオンほどではないが、猛スピードのダイジェスト的な詰め込み展開になっている。皆殺しの富野さんともバトリング可能な、ロボットアニメ界の超名監督・高橋良輔さんやスタッフの方々の悔しさが伝わってくるような結末だった。

 

そこでこのOVA「蒼き流星SPTレイズナー ACTⅢ 刻印2000」である。
「ACTⅠ」と「ACTⅡ」はそれまでのテレビ放映の総集編。そしてこのOVA「ACTⅢ」で、急ぎ足だった最終回を、くわしくきちんと見せてくれたのである。ファンはどれだけうれしかったことか!

 

なのでこのOVAの見かたとしては次の3つがあると思う。

 

その➀
「ACTⅠ」「ACTⅡ」「ACTⅢ」を順番に観る。

その➁
テレビ版の全38話を観る。急ぎ足の最終回に「?」と思う。なので、その疑問が解消されるOVA「ACTⅢ」を観る。

その③
もう全部観る。

 

しかし私はあえて!「その➁」もしくは「その③」の見かたをオススメする!
テレビ版全38話!Amazonプライムで今なら(執筆時:2017年8月)何と全話無料である!
「ええ~、でも、長い~」と二の足を踏む方もいるかもしれない。
しかし悲しい瞳で私を責めないで、何も言わずに書かせて欲しい。
「その時間は絶対に無駄にはならない!」と!そう言い切ってしまおう!
80年代のロボットアニメ界を、凄まじい光芒を放ちつつ駆け抜けた、この蒼き流星を見逃すべからず!