「機甲猟兵メロウリンク」 主人公がロボットに乗らずロボットと戦う異色復讐譚。せつないぜ♪

■監督:神田武幸
■1988年
■全12話(各話 約25分 当時は各巻に2話づつ収録されていました)

 

テレビアニメ「装甲騎兵ボトムズ」はリアルタイムで観ていた。
私の住む広島では、曜日は忘れてしまったが、たしか平日の夕方に放送されていたと思う。
「地獄の黙示録」や「ランボー」などのベトナム戦争後遺症映画と日本のロボットアニメを地獄の釜でグツグツ煮込んだような混沌としたドン底世界観。
「声優さんがギャラ泥棒って言われとらんかのう…」と心配になるぐらい全然しゃべらんクールにもほどがある主人公。
「うわー!でっかい!カッコいい~!」とはチビッ子が絶対言わなそうな、チビッこい&デブい&鉄サビの匂いがしてくるような4メートル弱のロボット・AT(アーマード・トルーパー)。
西日のさす部屋で毎週観ながら「何でこの企画通ったんじゃろうか…?人気なくて終わるんじゃなかろうか…?」と子供心に思っていた。

 

しかし、そんな私のいらん心配はよそに、「2001年宇宙の旅」や「暗黒神話」スケールの超展開を見せるラストまで作品はキチンと完走ローラーダッシュ。
ATのマニアックなデザインは男子のミリオタ魂をくすぐりまくりプラモデルもヒット。「ホビージャパン」などでたびたび特集が組まれ、読者が改造した俺ジナルATが投稿されまくり、大きな盛り上がりをみせた。
また、小説「青の騎士ベルゼルガ物語」など、同じ世界観で描かれたスピンオフ作品も次々と誕生。そしてそれは今も続いているのだ。シェアワールドの魅力あふれるボトムズの世界は底が知れない。

 

このOVA「機甲猟兵メロウリンク」はそんなスピンオフ作品のひとつ。
野心保身しか頭にない腐れド外道な上官たちの陰謀に利用され全滅した部隊。
たった一人生き残った若き兵士・メロウリンクは復讐を決意。戦友たちの無念をはらすべく、のうのうと生きている上官たちを一人一人猟り出し、怒りのパイルバンカーを撃ちこんでいく!

 

この作品が異色なのは「主人公がけっしてロボットに乗らず、ロボットと戦う」という点だ。
ATをとりあげられ、ライフルだけで戦わされた仲間たちの誇りのため、主人公メロウは自らも同じ装備で戦うというストイックかつ無理ゲーきわまりないリベンジ道をチョイス。
マントに身を包み、重たくかさばるライフル一丁ぶらさげて、鉄の塊のようなATに立ち向かい、傷つきピンチになりながらも秘策奇策を駆使し、時に運も味方につけ、AT驚く勝利をおさめていく。

 

 

メロウはいつも、ここぞという場面で己の血や泥で顔にペイントをする。
この《復讐の儀式》が「出た!待ってました感」ハンパなくカッコいい。「今度憎い誰かを殺す時は絶対マネしよう」と思うこと間違いなし。

 

 

特に第12話。ビックリ仰天な真のラスボスとのバトル。
傷ついた体を震わせながら立ち上がり、怒りの炎のようにあふれる自分の血を、いつもにも増した塗りたくりっぷりでシッカリベットリと顔に刻み込むようにペイントするメロウの凛々しさカッコ良さときたら!最終回にふさわしい燃える名シーンだ。

 

そのメロウのターゲットとなる上官たちは、人間狩りを楽しんだ後でワインを酌み交わしたり、降参してる相手をATで握りつぶしてニンマリしたりする百点満点のド悪党ばかりなのだが、彼らが乗る俺ジナルATがそれぞれ個性豊かな面白デザインなのも見もの。
ガンダムのMSV(モビルスーツバリエーション)ならぬATVが楽しめる。

 

またオープニング曲「ソルジャー・ブルー」は、亡き仲間たちへのメロウの想いを歌ったアニソン史に残る名曲。この孤独な復讐の物語を最終話まで観たら、あなたも思わずサビを口ずさまずにはおれないだろう!せつないぜ♪