『重戦機エルガイムⅠ ペンタゴナウインドウ』
(巻末にOVA「レディギャブレー」を収録)
■監督:関田修
■1986年
■61分
■オススメ度…71/100
『重戦機エルガイムⅡ フェアウェルマイラブリー』)
(巻末にOVA「ペンタゴナドールズ」を収録)
■監督:関田修
■1987年
■57分
■オススメ度…78/100
『重戦機エルガイムⅢ フルメタルソルジャー』
■監督:関田修
■1987年
■57分
■オススメ度…74/100
「土曜夕方の富野ロボットアニメ」は80年代オタクの必須科目だった。
なので当然、私も「皆殺しの富野」の名に恥じぬモノ凄いラストを迎えた『聖戦士ダンバイン』の後番組『重戦機エルガイム』も欠かさず観ていた。
二つの太陽に照らされた五つ星世界「ペンタゴナワールド」を舞台に、滅ぼされた王族の生き残り、ダバ・マイロードと仲間たちが、支配者オルドナ・ポセイダルに立ち向かうという物語。
この作品と言えばやはり、永野護さんという若き創造主の登場だろう。
「キャラクターデザインもメカデザインも同時に担当!」という驚異の二刀流にワシ界隈のみんな「このお兄さんはいったい何者なんじゃ?」と驚いていた。
ちょっと少女マンガの遺伝子を宿したようなスーパースレンダーな美形キャラたちも、ロボットアニメではあまり見たことがなかった新しい魅力を放っていたが、特にビックリだったのはやはり!本作に登場する巨大ロボたち「ヘビーメタル」のメカデザインである!
当時、アニメ雑誌に永野護さんのメカ設定画がよく掲載されており、それがとにかくマニアック!
ラクガキに夢中のチビッ子のノートみたいな細かい細かい設定の書き込みまみれになっており、ご自身が生み出す世界への尋常ならざる情熱を感じさせるもので、そこにみんなも熱狂!
また、番組サイドでも次回に新しいヘビーメタルが登場する時はラストで下記画像のように予告!
この斬新なメカデザイン猛プッシュメソッドに「うおお~!次回はアシュラ・テンプルっちゅうヘビーメタルが出るんか~!」などと、そのつどみんなまんまと大興奮!
永野護さんは、80年代アニメ界の、若き新しきスターだった。
そんな熱狂の中、特に強烈に覚えているのは「人影騒動」である。
この頃、スポンサーの都合なのか何なのか、《ザブングル》に代わって《ウォーカーギャリア》、《ダンバイン》に代わって《ビルバイン》などなど…「主役メカの交代」というのがよくあった。
本作でもそれは行われ、途中で主人公のダバは「エルガイム」から「エルガイムMkⅡ」へと搭乗ロボをチェンジ!
それに合わせて放映されるようになった第2期オープニングで、アップになる「エルガイムMkⅡ」の頭部のクリアパーツの中に、ほんの一瞬だけ「人影」のようなものが映るのである!(ちなみにMIOさんの第1期オープニング『TIME FOR L-GAIM』も、鮎川麻弥さんの第2期オープニング『風のノー・リプライ』も昭和アニソン史に名を残す神曲である!)
板野サーカスで動体視力をモーレツに鍛えまくられた当時のアニメファンがこれに気づかいでか!
「見た!?エルガイム・マークⅡの額に…チラッと人影みたいなもんが映っとる!あれは…いったい何じゃろう!?教えて!Say MkⅡ!」と、衝撃の幽霊動画ばりに話題沸騰!
そして、アニメ雑誌に掲載されたメカ設定画の小さな小さな描き込みや、永野護さんの発言などによって、それがヘビーメタルをコントロールするための「ファティマ」という人間型コンピューターだと知ることになるのである。
もちろんみんなさらに大興奮!
「表にはまったく出てこない裏設定に、ここまでこだわりの世界が広がっているのか…!」と熱狂!
そして、その永野護さんのこだわりの世界は後に『ファイブスター物語』となり、何もかもすべて素晴らしい五つ星の強力な引力で多くの人々を永遠に魅き寄せ続けることになるのだ。
ところで今回紹介させて頂くOVA。
『レディギャブレー』と『ペンタゴナドールズ』は、それぞれ「総集編Ⅰ ペンタゴナウインドウ」と「総集編Ⅱ フェアウェルマイラブリー」の巻末に収録されていた超短編作品。
『レディギャブレー』は、頼もしきライバル、ギャブレット・ギャブレーが女装して、主人公のダバを誘惑しようとするお話。
凛々しい速水奨さんのオカマちゃん演技が楽しい。
『ペンタゴナドールズ』は2人のヒロイン、アムとレッシイがなぜか『カリフォルニア・ドールズ』ばりに女子プロで戦い、なぜか実況席にダバたちが座っており、なぜか最後はバスターランチャーまでぶっ放すぶっ飛んだお話。
2作とも本編とはまったく関係ない、オマケ的なコメディ。
その本編のほうは、ついに明らかになる恐るべき真の敵の正体と彼が乗り込む最狂のヘビーメタル《オリジナル・オージェ》の金色に輝く死神のような禍々しさ、ファーストガンダムばりに主役メカの首と片腕がもげる神作画の凄まじいラストバトル、タイムリミットの設定によるサスペンス、長年のライバルとの共闘によるヒロインの奪還、最後のトドメはダバが久々に乗り込む元祖主役メカ「エルガイム・マークⅠ」のバスターランチャー!
…という「やっぱ、さっすが富野さん!エンタメの王道をちゃんとやればやれるじゃん!」と、しっかり山盛り充分に盛り上がるグランドフィナーレ感!…の後に訪れる「やっぱ富野さんじゃん…」な、問題の鬱エンドを迎える。
このOVA2作とも、本編最終回を観終わった時のあのドンヨリヘビーメンタルな気分がプチ軽減される楽しい作品になっている。
(ちなみに、コミックボンボン誌上に放送と同時コミカライズされていた池原しげとさんによるマンガ版も、皆殺しの富野を1ミリも恐れず、ダバが明るいマイロードをまっすぐに進んでいくチビッ子雑誌掲載作品らしい終幕で、独自の魅力を放っていた)
いっぽう最後にリリースされた『フルメタルソルジャー』は57分間フル新作OVA。
本編では語られなかった、物語中盤途中のエピソード。
ポセイダルを守る個性豊かな13人衆とそれぞれのA級ヘビーメタル豪華大集合、そしてOVAならではの美しい作画による重厚バトルがたっぷり楽しめる。
『スターウォーズ』ばりのセイバーチャンバラや、後半になるにつれてどんどんゲス度が上がっていく敵キャラ、プレーター・クォイズの狂いっぷりも見もの!
しかし、基本的にはやはり3作すべてファン向けの作品。
総集編の作りも、初見の方にはちょっと厳しいまとめ方かもしれない。
なので本編を観よう!たったの54話!
当時、物議をかもした「あの問題の終幕」を若いアニメファンの方々はいったいどう思われるだろうか?
優しさが生きる答えならいいのにね!