バビ・ストックⅠ 果てしなき標的
■監督:影山楙倫
■1985年
■45分
バビ・ストックⅡ ザ・リベンジ・オブ・アイズマン 愛は鼓動の彼方に
■監督:矢部秋則
■1986年
■45分
いくつもの大地が宙に浮かび、魚が空を泳ぐ不思議な世界…
強大な力で全宇宙の支配をもくろむベンティカ帝国の攻撃により、ある日、警察国家が消滅!
ただ一人生き残ったケイトは、帝国を倒す鍵を握るという謎の2人、記憶喪失の少女ムーアと、殺人罪で服役中の少年バビと共に戦いを挑む!
アバンタイトルの少女救出劇。
80年代アニメの秘伝・背景動画を駆使してグングン疾走する、このバイクチェイスからもう凄い。
また続いて描かれる刑務所内ボクシングの試合シーンも、『あしたのジョー』ともガチンコ上等なケモノの血がさわぐ気合の入りっぷり。
謎の少年バビの、誰からのコントロールも拒もうとする孤高の野性を充分に感じさせる。
警察国家の消滅時に、画面に小さく映り込んだ、吹き飛ばされていく誕生日プレゼント。
岩肌にはりついた虫をトカゲが食い、それをすかさず鳥が食い、その鳥が…というこれから始まる戦いの激しさを象徴するような野性動物の描写などなど…ディテールも細かい。
「80年代アニメ界にカナメプロあり!」な、さすがの神作画が全編にわたり炸裂。
いのまたむつみさんがデザインしたイケメン敵キャラ《アイズマン》も、『幻夢戦記レダ』のゼル再びな麗しさ。
そして、ここぞのタイミングでかかりまくって、こちらのテンションをパワフルにアゲてくる歌は、当時、ビジュアル系シンガー&俳優として少女たちをメロメロにさせていた本田 恭章(ほんだ やすあき)さんである!
な…懐かしい!(Facebookを見させて頂いたが、今も麗しくてビックリ!)
45分の中に謎や驚きの展開をしっかりと盛り込み、興味を持続させる寺田憲史さんの脚本もさすがだ。
…と、このようにアニメーターとして活躍しておられた影山 楙倫(かげやま しげのり)さんが、初の監督作に挑む気合が随所にみなぎった非常な力作である。
しかし!
レディース&ジェントルメン!
いくつかの謎を残し、「逃げられない戦いに踏み込んじまったようだぜ」というセリフでこれからの展開への期待を存分に盛り上げてくれた本作は、続くパート2で、大変失礼ながら、驚きの尻すぼみを見せるのである!
「オッパイ見たでしょ」「見てない」で、しょーもない痴話ゲンカを繰り広げる、ラブコメ主人公みたいになってしまったバビをはじめ、キャラクターたちみんなまるで別人!
その別人たちが、手足をバタつかせるギャグアニメのような動きを、なぜかシリアスシーンでもたびたび披露!
パートⅠの冒頭で、バイクをバリバリと噛み砕いて大暴れしてた巨大怪獣に1秒でやられそうなへボい作画の怪獣が出現!…と思ったら、ホントに秒で泣いて逃げ出すという、観てるこちらが泣きたくなるようなシーンも炸裂!
童夢的リアリティーみなぎる超能力でバビたちを苦しめた恐るべき女エスパーは何と!この驚くべきパートⅡでは、空を飛びつつ口からビームを照射!
ストーリーも、強大な帝国との戦いというより、残党のわずか2人を、『スターウォーズ』のイウォークみたいな連中と一緒に集団でボコボコにするお話。
ついに明かされるバビの殺人の過去もSFというより、なんかそこだけ昭和の大映ヤンキードラマみたいで超変。
諸般の事情で製作会社が変わり、スタッフもほぼ総入れ替えとなった結果らしいのだが…
この凄まじい落差に度肝をぬかれるべし!