■監督:うえだひでひと
■1989年
■各話30分(全6話)
私が車田正美先生の世界に触れたのは小3の時。
何度も書かせて頂いているが、父が脱サラして始めた小さな喫茶店に週刊少年ジャンプが置いてあり、あの『リンかけ』こと『リングにかけろ』が絶賛連載中だったのだ。
物語はまさにクライマックス!
主人公の竜児と、天才世界チャンピオンとして君臨する運命のライバル、剣崎の最終決戦ちょい前。
たしか竜児はプロデビュー戦がこの世界戦で、両者とも今までのギリシア十二神やジーザス・クライストなどと戦ってきた激し過ぎるボクシング人生のため、体中の骨に無数の細かいヒビが入っており、ドイツのスーパーコンピューターの計算によると「4ラウンドの途中で2人の体はリング上で消滅する!」という結果がはじき出され、にもかかわらず2人は運命の戦いを始め、必殺の超能力…もとい、鍛え上げたスーパーブロー「ブーメランスクエアー」がFIREし、「ギャラクティカマグナム」がBAKOOOMするのでリングが裂け、ロープがちぎれるのは言わずもがな、最終的には銀河が泣き、虹が砕けていた。
ナヌ!?「あんたナニ言ってんの?」ですと!?
いや!『リンかけ』は本当にそういうマンガなのだ!
そして、これで夢中にならない少年はこの銀河には存在しない!
途中からの観戦だったにもかかわらず、ハートをガッシリつかまれ、毎週固唾を飲んで試合の行方を見守った。
そして、あの最終回の一話前!
車田正美先生必殺のベタ塗りシャドウ演出が炸裂した「立ったのはいったいどっちだ!?」からの待ちに待った翌週!巻頭4色フルカラーの最終回!あの大興奮大感動といったらもう!
人気があるので無理やり連載を長引かせ、勢いがなくなって巻末のほうでションボリ何となく終わる作品もチラホラあった中、作者、編集者、読者、みんなが納得大満足の、終わるべき時にきちんと終わることのできた、最高に幸福なテンカウントだったと思う。
…で、その後、単行本でさかのぼって最初から読んで「最初はサイキック・SF・ファンタジー・青春・熱血・ボクシングマンガじゃなくて、貧困とかも描いた普通のスポ根モノじゃったんか…」と普通に驚いた。
ちなみにイメージアルバムもリリースされ、私はカセットテープ版で購入!
これは、声優さんたちが「ギャラクティカ・マグナム!」「スペシャル・ローリング・サンダー!」などなどと、作中に登場する超能力…もとい、それぞれのキャラクターたちが鍛錬を重ねて会得したスーパーブローの名を叫んだあと「ガカッ!グワッシャー!」と車田炸裂音がし、その必殺の超能力のイメージテーマが流れ始めるというなかなか凄まじいもので、テープが擦り切れるぐらい毎日聞いていた。
後に知ったのだが、楽曲を担当したのは、あの久石譲さんとのことである。(↓復刻されたCD)
そんな『リンかけ』に夢中な私だったので、車田正美先生の次回作『風魔の小次郎』が始まった時の興奮はハンパなかった。
先生ご自身は最終10巻のあとがきで、連載中にお父様が亡くなられ、落胆し、満足に描けなかったと、無念の思いを吐露しておられたが、私は充分大満足させて頂いた。
「忍なのになぜかみんな学生服着用」という、ジョジョの承太郎にも継承されるバビル2世イズムなカッチョ良さ。
「忍の力を使い全国制覇を狙う悪の学園に、こちらも忍びを雇って立ち向かう!」という少年魂が理屈抜きで燃える世界観。
何種類かのパターンに記号化されたわかりやすいキャラデザイン。
車田ワールドでは、アゴがシャープにとがった麗しい主要キャラたちと違い、やられキャラたちは本当にどうでもいい顔をしている。アゴもだいたい四角い。
そしてザシャアッと登場した主要キャラたちの、見開きページで炸裂する必殺技を食らって宙に舞いあがり、もれなくドシャアッされる。
車田ワールドにおける「どうでもいい四角アゴ顔」。それは即死フラグ。
そんな、女子の皆さんにけっして同人誌で描かれることのないやられキャラたちと全然ちゃう、麗しい車田美形キャラたちのオンパレード。
そして彼らの、敵同士ではあるが根底にはお互いにリスペクトが感じられる気持ちの良いタイマンバトル。
「フッ…」と不敵に微笑み、勝っていたと思ってたら実は負けていたりする、二転三転する戦いの面白さ。
荒木飛呂彦先生が「ジャンプでは照れてやってはいけないということを、車田正美先生から学んだ」と言っておられたが、『ジョジョ』は必殺技のシャウトだけでなく、サプライズ連続なバトルシーンの面白さのルーツもこのへんにあるのではないだろうか?
とにもかくにもいつの世もチビッ子は忍者好き。
彼らが「将来なりたい職業」の1位はユーチューバーなどではない!
そう!ホントは「忍者」!
なのになぜ本音を言わぬ?忍者だけに夢を口にするのを耐え忍んでいるのか?
ジャンプ黄金期に見参したこのガクラン忍法帖にチビッ子の私は夢中になった。
そしてこのOVAでは、まず原作の4巻までをほぼ忠実にアニメ化。(その後もシリーズが作られた)
テレビアニメ版『聖闘士星矢』で少年だけでなく、腐女子の皆さまたち、いや!世界中の人々の抱きしめた心の小宇宙(コスモ)を熱く燃やさせた荒木伸吾さんと姫野美智さんのイケメンメーカーズがキャラクターデザインと作画を担当。
原作にも負けぬ美形キャラたちが、難波圭一さん、速水奨さん、堀秀行さん、井上和彦さんなどなど綺羅星のごときスター声優たちの美声で必殺技をシャウト&バトルしまくる、眼福耳福アニメになっている!
妹思いの悲劇のサイキック剣士、飛鳥武蔵の立ち往生に車田泣きしよう!