■監督：相原信洋
■1989年
■18分
職場や学校などで、創価学会の方に勧誘や選挙のお願いをされ、困惑したことがチョイチョイあった。
私は、このような宗教的なものへの参加活動と言えば中学生の頃、悪魔教教祖、デーモン小暮閣下率いる教団《聖飢魔Ⅱ》の『地獄より愛をこめて』という大教典（アルバム）を狂ったように拝聴させて頂いたぐらい。
他にはまったくの無信心で、そしてどんなものにも入信する気はない。
なので、勧誘などを受けるたび「じ…実は他にもバイトやら習い事やらをしておりまして…な…なかなか時間が取れなくて…ちょ…ちょっと考えさせてもらえますかいのう…？」と男らしくハッキリキッパリ断っていた。
そんな中で、けっこう困ったのが、職場の主婦の方にかなり熱心に《聖教新聞》の購読を依頼されたことである。
その頃の私は、煙草銭にも困るような大貧民。新聞なんかあったら丸めて火をつけて吸っちゃいそうなぐらい。
とても購読する余裕などなく困った。
同じ職場にいた、その頃、好きだったお姉さんに、ある日そのことをポツリと話すと「あー、そーゆーのは、やっぱり職場ではやってほしくないよねー」と言っていた。
ちなみにそのお姉さんは、毎週日曜に教会に通っているクリスチャンであった。
色々ワケありの方で、傷ついて生きてきた人だった。だから人に優しかった。私はそこがとても好きだった。
一度「キリスト教が心の支えになっていますか？」と聞くと「うん。なってるね。」と即答なさった。
人が生きていくには、やはりみんな、支えとなる何かしらの「杖」が必要だ。
それが、尊敬する人の生きざまや、教えであったり、学問であったり、思想であったり、そして宗教であったりするのだと思う。
人によって「杖」はそれぞれあっていい。
無理やり奪ったり、自分の物を押しつけたりしなければ。
このOVA『ほしのゆうえんち』は、きっと多くの方の心の支えとなっておられるであろう、創価学会名誉会長の池田大作さんの絵本をアニメ化したものである。
鑑賞前は大変失礼ながら《オウム真理教》や《幸福の科学》が作ったような、突っ込み所満載のヘンテコ怪作アニメなのかと思っていた。
観たら全然違った。
普通に「いい話」だった。
主人公は小１のたけしくん。
ある日、先生が授業に使ったピカピカの折り鶴が欲しくてたまらない。
しかし厳正なる「クラス全員じゃんけん」の結果、折り鶴は友だちの のぼるくんがゲット。
ガマンできなかった たけしくんは、学校の帰り道、難癖つけて のぼるくんから「平和の象徴」を野性のケダモノのごとく強引にゲットワイルド！
しかし家に持ち帰るとビックリ！
その折り鶴がなんと突然、人の言葉を話し出した上、グングン巨大化！
たけしくん、女子のよしこちゃん、あきこちゃん、そしてさっき略奪したてのホヤホヤで顔を合わせるのが大変気まずい被害者のぼるくんを乗せて空へ！宇宙へ！「ほしのゆうえんち」へ！
「心が広くなる観覧車」「心が優しくなるメリーゴーラウンド」「心の中に勇気がわいてくるジェットコースター」などなど…
不思議な「ほしのゆうえんち」でさまざまなアトラクションに乗り、冒険に挑み、みんなすこやかに少し成長。
そして「折り鶴略奪事件」で心にチクリとトゲが刺さっていた たけしくんが最後に取った行動とは……？
やわらかで愛らしいキャラクターたちのデザインと、それがまったく崩れない安定した作画が素晴らしい。
当時はまだ珍しかったCGの使い方もチャレンジングで、作品に遊園地みたいなにぎやかさを与えている。
ストーリーも先述した通り、普通に「いい話」だった。
冒険から帰還し、目覚めた時が「朝」ではなく「夕方」なのもナイス原作アレンジ。
子供の頃、何か辛いことがあり、現実逃避で眠りに落ち、重い頭を起こして目覚めた時の、切なく懐かしい夕暮れの匂いがする、とてもいいシーンだった。
キャラクターデザイン＆絵コンテの中村隆太郎さんも、監督の相原信洋さんも、創価学会の「布教アニメ」にするつもりは、まったくなかったのではないかと思う。
友だちとのもめごと。
自分が悪いとわかっていても、謝罪と仲直りをなかなか切り出せないモヤモヤ感。
きっと誰もが経験したことのある あの葛藤と、それを思い切って乗り越えた先のちょっとくすぐったいような幸福感を、「18分」という短さながら丁寧に描いた、ショート・ファンタジー・アドベンチャー・ジュブナイル・OVAになっております！
- オススメ度…62/100
- 無料動画の配信…なし
- 有料動画の配信…なし
- ソフトのレンタル…なし
- ソフトの販売…中古のVHSがオークションなどでたまに
