■監督:押井守
■1985年 ■71分
70年代に創刊され、厳しい出版不況となった今も頼もしく発行され続けているアニメ雑誌界の雄「アニメージュ」。
その出版社である徳間書店が制作した作品。
当時、そのアニメージュ誌上で特集がバンバン組まれ、この押井監督作品を激オシ!
同誌の愛読者であり、押井守ファンでインテリの兄が、まあまあ高いVHSビデオをレンタルじゃなくてわざわざ購入。一緒に観た。
ラストシーン、カメラがだんだん引いていってアレが映ったところで ↓
…と言って兄をずっこけさせたのを覚えている。
そう!当時 たしか中学生ぐらいだった私には、このタマゴ、中身がサッパリわからなかったのだ!それにしても「カビた米」はまちがい過ぎだが!
ずっこけてる兄に
「あの石像だらけのバリでかいUFOみとうなんはなんねっ!?」
「街を泳ぐ影の魚はなんねっ!?」
「水ん中で会う大人になった少女はなんねっ!?」
「そもそもあの2人はなんなんねっ!?」
と、とめどなくわき上がる「なんね!?」をぶつけた。
すると兄は「はあ~…」と大きなため息をつき
「お前のう…観終わった後で思わず腕を組んで『う~ん…』と考えてしまうんが『ホンマのええ映画』なんで。」
と「名作の神髄」を弟に説いてごまかしていたので兄もサッパリわからなかったに違いない。
そしてこの数々の「なんね?」がポコポコ生まれるところが「天使のたまご」の魅力でもあると思う。そう!私はこのワケわからん作品が好きなのである!なぜ好きなのかはワケわからん!
暗く静かな影のような街を描き出した小林七郎さんの美術がすばらしい。そしてその世界を歩く迷い子のようなたった2人の登場人物。
1人は少女。演じるは押井作品だと「紅い眼鏡」でもおなじみの兵藤まこさん。消え入りそうにつぶやく演技で謎の少女の可憐さ儚さを見事に表現。
もう1人は少年。演じるは永遠の名優・根津甚八さん。このキャスティングは当時ちょっとビックリだった。男も惚れるあのシブい声が、少年のキャラクターデザインとのギャップもあり、独特な魅力をかもし出している。
作画もまったく古びておらず美しい。
天野喜孝さんがデザインしたキャラクターを崩さずにここまで美しく動かすのは、非常に高度なことだと思う。
特に少女の髪の毛の表現の細やかさ美しさは圧巻だ。(ちなみに作画には「エヴァ」の貞本義行さんや「茄子」の高坂希太郎さんが参加している)
「71分」という比較的短めの上映時間もいい。体調のいい時に観れば、独特な魅力を堪能できる作品だと思う。
でも眠い時などはまた今度にしましょう!