『BE-BOY KIDNAPP’N IDOL』とびっきり麗しい眼福耳福のさわやかソフトBL・OVA！

■監督：八谷賢一
■1989年
■27分

このOVAのキャラクター原案を担当なさったのは、マンガ家のおおや和美先生である。
BL同人誌、少女マンガ、小説のイラストレーションなどで華麗な活躍をなさっているおおや先生の作品を、大変失礼ながら勉強不足で読んだことがなかった。
なのでこのたび『真夏のクリスマス』なる本をゲット！
おおや和美先生が以前《諸星KAZUMI》名義で描かれた短編作品が載っている『聖闘士星矢』の同人誌である。
どうやら「フェニックス一輝とキグナス氷河の２人がラブラブだったら…」というもしもBL設定の作品集のもよう。

おおや先生の作品は、ルームシェアしてるっぽい青銅聖闘士の星矢たちが、みんなで『映画版うる星やつら完結編』を一緒にビデオ鑑賞、感化されたキグナス氷河が「好きだ。どーしてその一言が言えないっちゃ。」とフェニックス一輝にせまるという、トンデモえらいことになっていた。
ムード満点、あやうく夜のダイヤモンドダストがソファーベッドに飛び散りそうになっていた。

ちなみに他の参加者の方々も、一輝と氷河の２人に対して妄想モンモン！抱きしめた心のBL小宇宙を熱く燃やしすぎてフェニックスもたじたじの、愛あふれる濃ゆい同人誌であった。

『BE-BOY KIDNAPP’N IDOL』は、おおや先生のそんな真摯なBL愛が美しく結実したようなアニメ作品である。

追っかけに出待ちされワーキャー言われる、現役男子校生アイドル、志乃原和也（しのはらかずや）。

クールで長身でイケメンで成績優秀で声は草尾毅さんという、まるでアニメみたいなパーフェクトキャラの工藤秋彦（くどうあきひこ）。

2人は仲良し友だち。
アイドルと男子高生の二刀流で忙しい和也の生活をしっかり者の明彦は、送り迎えから食事の準備まで世話女房ばりにケア。

うまくやっていた2人だがある日、ほんのささいなことで男同士で痴話げんか！
そんな大変な時、さらに大変なことに、怪しい謎の黒服軍団が登場！
2人は取り囲まれ、KIDNAP（誘拐）されてしまう！

それは、アイドルとしてキラキラまぶしく輝く和也の姿を、ひそかにネットリと見つめ続けてきた、エロ社長ひきいる悪徳プロダクションのしわざであった…
和也の身にせまる毒牙！どうする明彦!?
2人の運命やいかに!?

おおや和美先生の繊細な少女マンガ描線を、全編通して崩れることなく完璧に再現した作画が美しい。敵も味方もキャラクターすべてが美しい。
さすが『伝説巨人イデオン』から『閃光のハサウェイ』まで、もう数え切れぬほどの作品を手がけてこられた、アニメーション作画界の生ける伝説巨人、恩田尚之（おんだなおゆき）さんである。

声優陣も豪華絢爛。
佐々木望さん、草尾毅さん、速水奨さん、池田秀一さんという主役級のスター声優が集結。
美少年、美青年をやらせたら右に出る者がいない美声オーナーの皆さんが演じる美形キャラが右にも左にも出まくっており、眼福耳福きわまりないことになっている。

ここぞのタイミングでかかりまくる数々のテーマソングも、アイドルのミュージックビデオばりの甘いウキウキ感を作品にトッピング！
特にクライマックス。
窮地を脱出した2人が、プレゼント・フロム・「まさかのあの人」のバイクにシッカリとタンデムし、橋本舞子さんの歌う、その名もまさに『美 BOY』という歌に合わせ、朝日に向かって走って行くシーンのさわやかさときたら！

歌と絵もシッカリとタンデムしてアクセル全開！問答無用フルスロットルで感動のボルテージをガン上げしてくれる、なんだかすごくいいシーンだった。
エンディングのライブシーンも打ち上げ感満点！

ところで本作『BE-BOY KIDNAPP’N IDOL』には、本当にエグいワル者は登場しない。
悪徳プロダクションの社長も部下たちも、どことなくかわいく間が抜けていたりして、なんとなくチャーミングに描かれている。

また、「BLもの」ではあるが、ハードなラブシーンはなし。
ナウいヤングの方にもわかりやすく説明すると「A」までしかなし。
なので私のようなほぼBLバージンで「最初からハードなのはちょっとこわいの…♥」という方も安心。
誰もがみんな気楽に観れる、とびっきり麗しい眼福耳福の、さわやかソフトBL・OVAになっております！