■監督:富永恒雄
■1989年
■40分(メイキング含む)
80年代、成田美名子先生の『CIPHER』(サイファ)の人気は凄かった。
マンガ好き、特に漫研などに所属してる女子の皆さんが集まっては、それこそ作中に登場するグルーピーのように「サイファ!サイファ!」とCIPHER談義にキャッキャと花を咲かせてる光景をよく目にしたものである。
そんな女子の皆さんから、サイファと違ってまったくキャッキャ言われない、落とした消しゴムを決死の思いで拾って斜め後ろから「お…落ちたよう…」とヌルッと渡してあげても、気まずそうにうなずき、生ゴミをつまむ時の手つきで受け取るだけでお礼も言われない私も実は!読んでいた!君たちの好きな『CIPHER』を!
兄が少女マンガも読む人だったので、この名作も もちろん本棚に並んでいたのである。
双子の美少年、シヴァとサイファ。
シヴァのほうは美術学校に通いつつ、俳優として活躍している。
しかしある日。友人志望の少女、アニスに「シヴァとサイファは交互に入れ替わり、二人一役を演じつつ学校に通っている!」という秘密を見破られてしまう。
なぜ2人はそんな無茶なことを続けてきたのか?
それには、彼らの過去にまつわる重く深い理由があった…
共に生きて来た半身への愛、コンプレックス、身も心も引き裂かれるような別れ。そして、血を流す魂の再生を美しいタッチで繊細に描いたこの作品。
正直、当時の私には難しかった。
「え~と…シヴァがお兄さんで、サイファが弟で、シヴァのほうは本名はジェイクで、サイファのほうはロイ…ほいで俳優としてはサイファは引退しとって、活躍しとるほうはシヴァ、ほいじゃが演じとるのはサイファ…ほいで学校にはシヴァとサイファが交互に通っとって…ほいで今、アニスとしゃべっとるのは結局どっちじゃったですかいのう!?」
…と、少女マンガを読んでるのに、激ムズパズル本に挑んでる時の顔になっていた。
くれぐれも言っておくが作品が悪いのではない。私の頭が悪い!
本作以外にも、兄の本棚に並んでいた吉野朔美先生の『少年は荒野を目指す』や、吉田秋生先生の『BANANA FISH』なども読み、キャラクターたちが抱える苦しみや作品のテーマが、少年マンガにくらべると、文学的で大人っぽいことに驚いた。
どこかで聞いた「10代の頃は女の子のほうが精神年齢が高い」っていうのは本当だなと思った。
このOVAは、そんな賢い女子の皆さんをトリコにした双子マンガ界の永遠のスター「CIPHER」の物語を忠実にアニメ化…したものではなく、『フットルース』など80年代の洋楽が流れまくる「シヴァ主演のMTV仕立て+メイキング」という粋な作品になっている。
インタビューに答えるシヴァのセリフなどもすべて英語という徹底っぷり。ちなみに演じたのは若き日の川平 慈英(ジェイ・カビラ)さんである。
「えッ!?」と思われる方もおられるかもしれないが、これがなかなか!ムムッ!いいんです!
とても凛々しく初々しいシヴァ&サイファっぷりを披露してくださっている。
キチンとした取材に基づいて描かれたニューヨークの風景が美しい。
そしてもちろんキャラクターたちも美しい。成田先生の絵の再現度がすごい。
原作を読んだ人には同じみの あのシーンこのシーン、あの絵この絵がバンバン登場!メイキングには成田先生ご自身も登場!
ファンにはとてもうれしい作品になっていると思います。
- オススメ度…70/100(ファン向けの作品です)
- 無料動画の配信…Youtube
- 有料動画の配信…なし
- ソフトのレンタル…なし
- ソフトの販売…中古のVHS