チビッ子の頃、土曜の夜といえば『まんが日本昔ばなし』であった。
市原悦子さんと常田富士夫さんのたったお二人で老若男女すべての登場人物を演じ分ける驚異的な語りべスキル。
普通のアニメーションだけでなく切り絵、影絵、ちぎり絵などなど、数々のアバンギャルドな試みがなされた作画。
職人技と斬新な実験精神がスパークしまくっていたこの見応え満点の昔ばなしが「怖い話の回」だとわかると、その頃からオドロ趣味全開だった私はわくわくテンションが上がったものである。
そんな昔ばなしはともかく、このOVA『日本のおばけ話』は『まんが日本昔ばなしの怖い回!」的なテイストの作品。
児童文学作家の木暮正夫さんと『かいけつゾロリ』の原ゆたかさんによる原作を下敷きに、4人のアニメ作家が自由に腕をふるった和風オムニバスホラーである。
『日本のおばけ話』
『日本のおばけ話1』
百目のあずきとぎ(演出:飯田つとむ)
きもだめしのばん(演出:岡 佳広)
■1988年
■30分
『百目のあずきとぎ』は「あずきとごうか 人取って喰おうか ショキショキ」の怖すぎる2択の俺ジナルソングでおなじみ、妖怪界のシンガーソングライターあずきとぎのお話。
これだけでも夜の山で遭遇したら失禁ものの怖さなのに、それがさらに百目というビジュアルで登場。
昔話にありがちな「教訓」などもみじんも残らぬ、希望も命乞いも丸飲みのバッドエンドに唖然。
そして、なんと監督はあの神OVA『デビルマン』の飯田つとむさんである。
『きもだめしのばん』は「もののけが仕掛けてくるだましのテクに耐えきれるか?」系ホラー。
主人公が逃げ昇った松の木の下に次々に現れてはいまいましげに去って行く「よく知ってる人のはずなのに何かが違う」村の仲間たちの微妙なニセモノ感がひたすら怖い。
- オススメ度…百目のあずきとぎ 63/100
- オススメ度…きもだめしのばん 60/100
- 無料動画の配信…なし
- 有料動画の配信…なし
- ソフトのレンタル…なし
- ソフトの販売…中古のVHS
『日本のおばけ話2』
のっぺらぼう(演出:楠美直子)
絵からとびだしたねこ(演出:中村隆太郎)
■1988年
■30分
『のっぺらぼう』は日本怪談史上おそらく最も顔が売れているあのスター妖怪の、あの有名な「再度の怪」を、あの小松原一男さんのキャラクターデザイン&作画で、あの野沢那智さんの完全な一人全役で語りきる恐るべき力作。
そして「みんな知ってるあの話」だと思って見てると、最後に顔をのぞかせる悪夢のようなオチにドン引き間違いなし。幽玄美の中に終末感さえ漂う極上ホラーに仕上がっている。
『絵からとびだしたねこ』は、猫の絵ばかり描いてるかわいい小坊主ちゃんが和尚さんに怒られ、寺を追い出され、夜、泊まったさびれたお堂でもののけに…というお話。
小坊主ちゃんのビジュアルが、襲いかかる恐るべき人喰い巨大ネズミならずとも食べちゃいたいぐらいかわいい。
最後にふさわしいホッと安心の「芸は身を助く」ほのぼのホラー。
- オススメ度…のっぺらぼう 68/100
- オススメ度…絵からとびだしたねこ 62/100
- 無料動画の配信…なし
- 有料動画の配信…なし
- ソフトのレンタル…なし
- ソフトの販売…中古のVHSしかなく視聴は困難な状態です