『湘南爆走族5 青ざめた暁』湘爆史上最大規模のあの抗争がついにOVAに!

■監督:西沢信孝
■1989年
■52分

 

いきなりだが、マンガ大好きな皆さまに問わせていただく。
「ページから明らかにアドレナリンが吹き出しており、読んでるこちらもそれを浴びて血液沸騰!爆裂興奮ハイテンションになってしまうという奇跡のように感動的なマンガ体験をなさったことはおありか?」と!
「ない!」という、まだ人生に大きな楽しみがある幸せな方に「この作品」の「あの回」を全力で推させていただく。
80年代カルチャー界隈に急速に勢力を拡大させた無数のツッパリ漫画たちの中でも最強のチーム『湘南爆走族』!
その第5巻収録『青ざめた暁』を!

 

 

ずいぶん前のことだが、たしか『湘爆』の神回を選んで何冊かに分けて収録した「よりぬき湘爆」みたいな雑誌がコンビニに置かれたことがあった。
もちろん『青ざめた暁』も選ばれていた。
そのインタビューコーナーで、当時の担当編集者らしき方がこのような趣旨のことを言っておられたと思う。
「不可能と思えるような困難なストーリーにあえて挑むことでマンガ家は化ける。吉田聡先生にとってそれが『青ざめた暁』だった」と。

 

また、楽しい夜の漫語り番組『NHK BSマンガ夜話』で、『湘爆』の回があった時のこと。
ゲストのお笑いコンビ《よゐこ》のお二人と、番組の辛口番長いしかわじゅん先生が、推し回として『青ざめた暁』を選んでおられたと思う。

 

つまりこのようにこの回は、多くの湘爆ファンにとってやはり特別。
隔週連載で一話完結方式の青春ギャグ(ときどきシリアス)という基本的なスタイルから大きくはみ出し、なんと第5巻を丸ごとぜんぶ使うという異例の唯一の大長編。

 

 

吉田聡先生の「ここらで一発すげえのをやってやんよ!」というような、若き野心みなぎる圧倒的ボリュームとクオリティで、死人が出てもおかしくない湘爆史上最大規模の抗争をドラマチックかつエモーショナルに見事に描き切った奇跡の伝説回。
それが『青ざめた暁』なのである!
ページから明らかにアドレナリンが吹き出している!

 

ストーリーはスーパーハード。
江口たちの湘南に、横浜ブラディヒールが侵攻を開始。次々と名だたるチームを潰していく。
走りを看板にしていたはずのブラディヒールは、なぜ凶暴なケンカチームに変貌してしまったのか?
そしてその中には、マルが中学時代にイジメからたびたび助けた財津の姿があった…
江口たちの良きライバル、権田が率いる地獄の軍団までもが血の海に沈んだ時、ついに湘爆が立ち上がる!
江口ィ‼︎てめえの出番だぜえっ‼︎

 

冒頭と終幕にタイプライティングされたニュース記事を載せることで、この抗争の恐るべき大きさを表現する見事な演出。(いつもはおちゃっぴいな江口が、実は神奈川県警にとって要注意人物であることを認識させられる「少年E」という表記の衝撃よ!)

 

血まみれの野望に燃えるブラディヒールの副総長・火影が、暗闇の中から般若心経をバックに現れたり、その顔が闇夜に悪霊の如く浮かんだりする、ほとんどホラーな禍々しく尖った描写。

 

 

暴走族同士がまるで軍隊のような作戦や戦術を使って激突する本格集団抗争劇的な興奮と面白さ。(大爆発まで起こる戦いの果てに敗れてしまう権田が最後にライバルの名を叫ぶ姿の凄まじさたるや!)

 

津山さんには見せられないかもしれない、いつもよりさらに怖い、怒りに燃える江口の鬼面の戦慄。

 

 

ついに特攻服をまとった湘爆がオトシマエをつけるため、巨大な陣を敷いて待ち構えるブラディヒールの本拠地へ、たった5人でアクセル全開突っ込んでいくクライマックスの、ボルテージがレッドゾーンまで一気にぶち上がっていくような天才的なコマ割りからの…「湘爆!だあっ‼︎」。
これで燃えないマンガ読者はこの世には存在しない。

 

 

続くハイテンション大乱闘と、拳と口で殴り合うツッパリ版青年の主張のようなタイマン。
そして、嵐の後のようにおだやかで優しい余韻を残す、あの海辺のP・S…
読めばきっと誰もが感動の波に包まれるだろう。
ツッパリが嫌いでも大丈夫!シャバ僧軍団のアタマのような私が言うのだからまちがいない!

 

OVA版は、このまちがいない名作をほぼ忠実に再現した、まちがいない名作となっている。

 

 

「迫力という点でやっぱり原作のほうが強え!」とか「ちょっとコミカルすぎるかも?」と感じる部分もチョコチョコあるが(湘爆の迫力に押されたブラディヒールがピョコピョコ逃げ出すシーンなど)、それでも胸打つまちがいない名作。

 

 

特にキーパーソンである財津を演じた声優界の聖戦士、中原茂さんのラストの泣き笑い演技は、もらい爆泣き必至!
原作では、元イジめられっ子の財津が、マルに「イジめる方に移っただけじゃねえか!」と鉄拳で諭され、「丸川!おめえはやっぱ強えんだな」と真顔で静かにつぶやく。
しかしここを、財津が大粒の涙をボロボロとこぼす「泣き笑い」にアレンジしたことで、よりエモーショナルになっている。
ベテラン西沢信孝監督の確かな演出力が涙腺のアクセルをグイグイ回してくる、原作越えの名シーンだ!

 

 

そうそう、いつも「ここぞ!」のタイミングでかかる人気ミュージシャンの楽曲でもハートに火をつけてくるOVA版湘爆シリーズだが、なんと今回は世界的ジャパメタバンドLOUDNESSがガソリン投下!

 

 

激しくスクリームする名曲『Dreamer And Screamer』に合わせ、たった5人で特攻をしかける湘爆の勇姿に燃えるべし!

 

 

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