■監督:森脇 真琴
■1991年
■30分
『うる星やつら』の初めての映画は、ご存じオンリー1なカリスマ監督、押井守さんの『オンリー・ユー』である。
私はこの作品を、あの「ラムのオッパイ丸出しシーン」が夜の7時半にブラウン管からお茶の間に向けてボイ~ンと普通に飛び出していた昭和の頃、リアルタイムで映画館で観た。
インテリ好みの難解作品メーカーでもある押井守さんがマニアックな作家性をおさえ、実はきちんと普通に持っておられる手練れの職人スキルでエンタメの枠を守った結果、心底ワクワクするSFラブコメ・アドベンチャーに見事に仕上がりまくっており、私はもう大満足!(特に弁天様がカッチョいいのなんのって!この作品を観て彼女に惚れない男は宇宙には存在しない)
そりゃもう大ヘンな面白さで、当時の映画館は入れ替え制ではなかったから2回観た。
ちなみに広島では相米慎二監督の『ションベン・ライダー』という映画と同時上映であった。
当時の私はウンチシッコで爆笑必至のチビッ子であり、マンガ、アニメ、ファミコンにしか興味がなく、相米監督のことも存じ上げなかった。
なので「この同時上映の映画『ションベン・ライダー』じゃと!ションベン!ションベン!ウヒョヒョ~!」と爆笑し、はしゃぎ、そして観なかった。大変失礼ながら『ションベン・ライダー』の上映中はトイレにションベンなどに行っていた。
いま思うとリアルタイムで相米作品を体験できるという貴重なチャンスだったのにもったいないことをした。ションベンかけてやりたいぐらいアホであった。
前置きが黄色くなってしまったが、そんな感じで映画館で2回観て、後にビデオでも何度も観ることになる『オンリー・ユー』だが、大変失礼ながら今考えると個人的にはちょっと不満もある。
物語の中心人物、ヒロインのエルが救われないところである。
かわいそうだ。
彼女も救われ、誰かと幸せになったほうが作品全体のカタルシスや多幸感がアップすると思う。
そして原作者の高橋留美子先生だったら、きっとエルにも誰かいい相手を用意しただろう。
しのぶに因幡くんとの出会いを用意したように。
そんな1作目『オンリー・ユー』オンリーにはならず、あの2作目『ビューティフル・ドリーマー』などなど、続けてたくさん作られた映画版だけでなく、時はビデオバブルの昭和後期、当然OVAも次々リリース!
未映像化だった原作エピソードをアニメで観れることになりファンを歓喜させた。
そのOVAシリーズ最終作が『霊魂とデート』。
すでにステキなお相手がいるサクラが中心となるエピソードである。
男子みんなの憧れ、保健室の先生にして霊能力者のサクラはイライラしていた。
久しぶりのデートだというのにフィアンセのつばめが待ち合わせ場所に現れないのである。
なのになぜかいつも通り突然あたるやラムは現れ、ちょっかいを出してきては大騒ぎするのである。
そんな時、テンから「つばめが家で若い姉ちゃんと抱きあっていた!」という信じがたいタレコミが!
現場に向かったサクラたちが見たのは、ホントに若い姉ちゃんと抱きあっているつばめの姿であった!
とびっきりかわいい彼女の名は舞子。幽霊女子。
ひょんなことからつばめに一目ぼれし、憑りついてしまったのだ。
さっそくサクラは除霊をこころみるが…
それは予想をはるかに超える、原作をも超えるとんでも大騒ぎの始まりであった!
今…あの世とこの世をつなぐ禁断の扉が開く!?
OVAシリーズのラストを飾る本作は、歴代うる星ソングスの中でも最もコケティッシュなナンバー『殿方ごめんあそばせ』で開幕!
南家こうじさんの描くラムのまぶしい姿に、メガネならずとも全男子悩殺必至。
そして始まる本編は、とにかくもう作画が驚くほど美しい!
全8本リリースされた『うる星やつら オリジナルビデオシリーズ』の中では間違いなくトップ!
例えば、つばめのベッドで眠る舞子の、幽霊だけに透き通るような可憐であどけない寝姿。
テンから「つばめの浮気」のタレコミを聞いたサクラたちが現場にかけつけるアクションの、なだれ込むようなドタバタ躍動感。
マンガやアニメでもめごとシーンを表現する際に古来より多用され続けてきた「煙の中からキャラの顔や手足がピョコピョコ飛び出す」という便利定番テンプレ《ケンカスモーク》を、あえて堂々と焚きまくる腰の据わったギャグ演出。
空から「あるモノ」が落ちてくるシーンの、ふいに時が止まったような束の間の不思議な静寂。
そして、その中で何かを感じ取る、いつもにも増して大人っぽいサクラの美しい顔…
どこを切り取ってもすばらしい!
映画版レベルの特筆すべき隙のないクオリティの高さである。
また、この『うる星やつら オリジナルビデオシリーズ』はそれぞれどれも原作に改変を加え、キャラクターたちを追加出演させ、アニメ版ならではの面白さを追求している。
その中でも本作は「あの世」と「この世」をつなぐデンジャラスなシャッターが大きく空間に開かれてしまうぐらいフリーダムかつダイナミックに原作をアレンジ!
よりスケールアップした とんでもディザスターを楽しめる作りになっている。
そのクライマックス。
あの世に引きずり込まれそうになるラムを、一瞬の躊躇もなく助けようとする あたるの男前な姿にグッとくることまちがいなし!
その直後。
原作では出番がなかったのにこのOVAには引きずり込まれ、あの世にも引きずり込まれそうになる面堂を一瞬の躊躇もなく犠牲にして蹴落とそうとするあたるの姿にドッと爆笑が吹き出ることまちがいなし!
そして、「仲良く手を取り逝ってしまった2人」の幸せを確認し、いつものドタバタが「ある意外な方法」で無事に戻って来るラストに、サクラとつばめ同様、何だかいい気分でホッとすることまちがいなし!
そんなまちがいないOVA最終作。
この終わらない祭のような楽しい世界とその住人たちに幸運を!
観ればきっとそんな気持ちになるところでかかってくれるエンディングはズバリこの名曲!
『Good Luck』!
- オススメ度…70/100
- 無料動画の配信…Youtube(ロシア語?)
- 有料動画の配信…なし
- ソフトのレンタル…なし
- ソフトの販売…Blu-ray BOXに収録あり!また『OVAカルテット』というDVD2巻に収録あり!
■OVA版『うる星やつら』の一覧です(作られた順)
■関連商品