■監督:出崎哲
■1987年
■55分
私が青春を過ごした80年代に観て一番泣いた映画。
それは出崎哲監督の『うる星やつら 完結篇』である。
あのクライマックスのあたるの「忘れるもんか!」の繰り返しと、それに合わせて次々と映し出されていく想い出の中のラムの姿。このたたみかけるような怒涛の連打で涙腺完全破壊。
『あしたのジョー』などで有名な弟の統(おさむ)さんとはまたひと味ちがう、職人的でオーソドックスだが力強いもう一つの出崎演出にしっかりと胸を打たれた。
『めぞん一刻』と同時上映だった劇場で鑑賞した時はもちろん、その後ビデオが発売された時も、ダビングして、テープが擦り切れるぐらい繰り返し観て、そのたびに号泣していた。どうしても我慢できない。あの感動、忘れるもんか!
原作マンガの「鬼ごっこで始まった長い連載が、鬼ごっこで終わる」という、丸ごと1巻使った最終エピソードはもちろん素晴らしい大団円だった。
「ボーイ・ミーツ・ガール」という粋なタイトルや、今まで登場したあの大ヘンな人数のキャラクターたちがすべて再登場する愛にあふれた展開も何もかも最高。
80年代のマンガファンすべてを「友引町に住みたい」と思わせた超人気作の幕引きにふさわしい感動的なラストだった。
しかしそのマンガ版にはない、映画版のあのクライマックスのたたみかけ演出は、涙腺決壊度においては原作越えのとんでもない破壊力だったと思う。
私が死ぬほど泣かされたその映画版と同じスタッフ、素晴らしき涙腺クラッシャーの皆さんによって作られていたOVAが本作『うる星やつら 夢の仕掛人 因幡くん登場!ラムの未来はどうなるっちゃ⁉』である。
なので、もちろん完成度は言わずもがな。
ちなみに『うる星やつら』シリーズ初のOVA。
ところでみなさんは、先日、小学館から発売された『漫画家本vol.14 高橋留美子本』をお読みになられただろうか?
仕事場や書庫の興味深い写真、高橋先生をリスペクトする漫画家の皆さんによるトリビュートイラスト、コラム、本格的な作品論、読み切りホラーなどなど…
全宇宙のるーみっくファン必携の読み応え満点本である。
その中に掲載されたインタビューで高橋留美子先生が次のように語っておられた。
とにかく連載中ずっと、しのぶのことを考えていたんです。(中略)
ある時、因幡くんが出てくる回のドアのエピソードを思いついて。そこで未来は作り変えられるというオチをつけられて。
これならしのぶも幸せになりそうだなと思い、そろそろ物語を締めてもいいかなと考えるようになったんです。
自らが生んだキャラクターへの愛がハンパない留美子先生にとって、実は『うる星やつら』という作品の幕を閉じるために絶対に必要な鍵となるエピソードだったのだ。
テレビアニメは既に放送が終了していたため作られなかったその重要な「しのぶ回」を、このOVAはほぼ忠実に再現。
因幡くんの最後の問いかけにニッコリとほほ笑み、だまってうなずくしのぶの姿。
本作のスタッフの皆さんは、このエピソードに込めた留美子先生の想いをシッカリと感じ取っておられたのだろう。
初期『うる星やつら』の高田明美さんのキャラクターデザインとは違う、ちょっと頭身高めの絵柄はもしかすると好みが分かれるかもしれないが、しのぶと同じく観るほうも幸せな気分になれる間違いのない良作。
宇宙で一番の浮気な男の子・あたるが「ここぞ!」というところでは見せる男気にも、ラムちゃん同様グッときます!
- オススメ度…72/100
- 無料動画の配信…Youtube
- 有料動画の配信…なし
- ソフトのレンタル…なし
- ソフトの販売…DVDあり
■OVA版『うる星やつら』の一覧です(作られた順)
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