『X電車で行こう』 りんたろうさんが走らせた、もう一つの鉄道

■監督:りんたろう
■1987年
■50分

 

あまたの名作が綺羅星のごとくまたたくアニメーションの銀河を、ひときわ美しい光を放ち続けながら駆けめぐる流星。
「青春」という時を生きたすべての人々の万感の思いを込めて行く魂の汽車。
永劫の宇宙的名作アニメーション『劇場版 銀河鉄道999』。
多くの方が「人生ベスト」に挙げることも多いこの作品を監督なさった りんたろうさん。
そのりんさんが走らせた もう一つの鉄道!
それが本作『X電車で行こう』である。

 

原作は山野浩一さんのSF短編。
ある日、突然、都心に姿が見えない謎の幽霊電車「X」が出現。そのコース上にいたモノは感電黒コゲになってしまう。
神出鬼没、そしてだんだん速度を上げ、縦横無尽に走行範囲も広げ始めたX電車に日本中が大パニック!
そんな中、鉄道を愛する、とある しがない孤独なサラリーマンはX電車が彼が予想した通りのコースを走ることに気づく。
いったいなぜ?
そして「X電車」とは何なのか…?
…というミステリアスなストーリー。

 

このOVA版は、さすが りんたろうさん、そしてさすがのマッドハウス・クオリティー!
とにかくもう絵が美しい!
特に、濃密な闇の中でほとばしる光の表現は、同年にリリースされた同社の神OVA「妖獣都市」にも負けぬ妖しい美しさだ。

 

 

多用される正面フィックスの画面レイアウトも、オシャレなイラストみたいでインパクト大。
マンガのように吹き出しを入れるアイディアも斬新だ。

 

 

 

また、音楽はあの山下洋輔さんが担当。
エンディングでは、作品タイトルの元になったジャズのスタンダード・ナンバー『A列車で行こう』(Take the A Train)の矢野顕子さんバージョンも堪能することができるという大人な豪華さ。

 

ストーリーは、原作に改変が加えられており、正直を申し上げると、個人的にはちょっと飲み込みずらいところもあった。
また主人公の性格も、上司の叱責や単調な伝票整理の仕事が続く毎日に疲れ切った孤独なサラリーマンから、広告代理店に勤める軽い男に変えられている。

 

もしも…
原作に寄せた、孤独な、しがない、さえない、鉄道を愛する主人公で…
子供みたいに自由に走り回る謎の幽霊電車「X」に心ひかれ、文字通り身を焦がし…
そしてあの「さぁ相棒!旅に出よう!」で『A列車で行こう』が流れ出したら!
こりゃ、どんなにアガるだろう!
…と、ちょっと思ったが、いやいやこれはあくまで、孤独な、しがない、さえない、私の勝手な夢想。
いま観ても美しく、ポップで、非常に見応えのある名作OVAなのは間違いなし!

 

仕事を終え、疲れ果てた心と体を癒す晩酌のお供に映画やアニメを観るのが好きなアナタ!
ジャズに合うウイスキーのグラスを片手に、今夜のお供はX電車で行こう!

 

  • オススメ度…70/100
  • 無料動画の配信…Youtube
  • 有料動画の配信…なし
  • ソフトのレンタル…なし
  • ソフトの販売…中古のVHS、レーザーディスク