■監督:矢吹公郎
■1988年
■45分
80年代当時、徳間書店の「アニメージュ」誌上にOVAレビューのコーナーがあった。
何人かのメンバーが、☆印と短いコメントで最新のOVAを評価するというもの。
その中にマンガ家・あさりよしとお先生もおられ、前田有一さんもビックリの結構な辛口批評を毎回披露。
そして私のバイブル、永井豪先生の神マンガ『デビルマン』のOVA化作品『デビルマン 誕生篇』が発売され、このコーナーで取り上げられた時のこと。あさり先生が次のような評価をしておられた。
「西洋風にすべきものを日本風にしてしまったという感じ。正直この先はもう見たくない」
何しろ生き残りをかけてVHSとベータがアーマゲドンしてたくらい昔のことなので、☆いくつだったかは忘れたし、お言葉通りではないかもしれないし、不確かなだいたいの記憶でひと様のことを書いてはいけないが確かだいたい合ってると思う!
カラムーチョ食いながらアニメージュ読んでた私は、こき下ろしてるワケではないにしろ、この辛口な言い草に大激怒!こんなに辛くてインカ帝国!
プンスカしながら兄に報告すると「ええところを見つけて書くのがホンマのええ批評。何でもけなしゃええゆうもんじゃない。」とOVAをバッサリ斬りまくっておられたあさり先生をバッサリ。しかしその肩越しに見える兄の本棚には先生の代表作『宇宙家族カールビンソン』がシッカリ並んでいるのであった。何なの!そんで読んでみたらすんごい楽しかった。何なの!
『宇宙家族カールビンソン』は、80年代に《月刊少年キャプテン》で連載されていた作品。『強植装甲ガイバー』などの規格外に強力極まりない連載メンバーの中でもその人気たるやキャプテンクラス。
宇宙をさすらう、個性豊かすぎるメンツの芸人一座が、ひょんなことから身寄りのない小さな女の子を家族として育てることに。コロナちゃんと名づけられたその子との家族模様を、SF、アニメ、ゲームなどの思わずニヤリなパロディー満載で描いた傑作ほのぼのマンガだ。本作はそのOVA化である。
家族が芸人一座であることをうまく使った、拍子木の音も軽やかに文字通り幕を開けるオープニングがお見事。
作画も美しく、声優陣も豪華。家族へのコロナちゃんの想いを込めたような歌も愛らしい。
エヴァの使徒デザインでもお馴染み、あさり先生のデザインセンスが爆発した、原作の大きな魅力の一つだった、キモかわいい脇役キャラたちもきちんとチョイ見せサービス。
いつか来るであろうコロナちゃんとの別れの予感をはらみつつ、四季を追う形でかけがえのない毎日が描かれ、クライマックスではまんまとホロリ。ストーブで温められた夕飯時の冬の居間のような心地よい感動にジンワリと包まれるだろう。
ただラストのあそこで…コロナちゃんが、ちょっとあのおばさんのことを心配してくれても良かったのではなかろうか?でないとコロナちゃんがまあまあ冷たい自己中ワガママ娘に見えてしまう気がしないでもない…のは気のせいかもしれない。エンディングでおばさん無事で良かった!
ところでこのOVA。アニメージュの例のコーナーで、あさり先生はレビューをなさったのだろうか?…と思ってたら何と!徳間書店の《月刊COMICリュウ》の2010年5月号、6月号で!上下2巻に分けて!アニメージュ誌上のあさり先生の全OVA批評を収録した冊子が付録でついていたそうなんである!
いったいどなたがそんなマニアックな付録のアイディアを考え、そして企画が通ったのだろう?きっと私と同じく、あのコーナーのあさり先生の毒舌レビューを読者として楽しみにしていた方々が大人になり、就職し、徳間書店の編集部に入られたに違いない。
そのステキな付録ゲットできた方、うらやましいな~!
- オススメ度…68/100
- 無料動画の配信…Youtube、ニコニコ動画
- 有料動画の配信…なし
- ソフトのレンタル…なし
- ソフトの販売…中古のVHSのみ