■監督:島谷陽一郎
■1989年
■20分
「サンタクロースは地球の人ではないのです…」
サンタさんの存在を信じるピュアなチビッ子のみんなが聞いたら、正体がお父さんだとわかった時よりも微妙なくもり顔になりそうな、まあまあ衝撃的なナレーションで幕を開けるチビッ子向けクリスマス・ファンタスティック・アニメ。それが本作『7人のサンタクロース』である。
クリスマスに世界中の子供たちにプレゼントを届けるべく奮闘するサンタさんたちを描いた、20分の短編作品だ。
「サンタクロースは地球の人ではないのです…」
では彼らはいったい何者なのか?
本作によるとサンタさんたちは恋人でもなく、お父さんでもなく、はるか宇宙の彼方《サンタクロス星》というストレート極まりない名前の星に住む宇宙人なのである。
7つの大陸を持つ地球には7人のサンタが派遣されており、子供たちの希望のプレゼントをリサーチ。収集したデータをパソコンルームから母星に送信。
それをキャッチして、製造して、配送するという、ジェフ・ベゾスが気が狂って慈善事業に変革されたやさしいAmazonのようなシステムで運営されているサンタクロス星。
ちなみにその姿は…
赤いっ。
ナレーションによると「住む人も建物もすべて赤いから星が赤く見える」とのこと。
よかった…
スーパーロボットアニメのラスボスが住む星みたいな赤こわさだったので、チビッ子にこのOVA見せたらションボリするんじゃないかとご両親の皆さんは心配されるかもしれないが、この理由の赤さなら安心である。
かくしてクリスマスがせまると、7人のサンタクロースたちはトナカイのひくソリに乗り、世界中を回って子供たちの望むプレゼントをリサーチ。
方法は窓から自分の目でダイレクトに確認するアナログな覗き魔スタイル。
ちなみにクリスマスものの映像作品で、空を駆けるトナカイの定番効果音「♪シャンシャンシャン♪」は本作では未使用。
代わりに「プルルルル…」という80年代シューティングゲーム『ギャラクシアン』ような音と共に世界中に飛来。さすが宇宙人である。
そして全世界のチビッ子が待望するクリスマスの夜。
集めたデータを元に赤い星から地球に送られてきたプレゼントを、7人のサンタクロースが世界中に配送。
その方法は煙突じゃなくて窓からダイレクトに土足で上がり込む空き巣スタイル。
7人のサンタクロースたちが7つの大陸を股にかけてプレゼントを配りまくるこの奮闘ぶりは、メルカトル図法で描かれた地図の上に、ナレーションとソリのプルルル移動をオーバーラップさせるという省エネ作画でシンプルに描写。
ちなみにこの7人のサンタクロースたち。
キャラクターごとの性格分けなどはいっさいされておらず、顔もみんな同じ。
黒澤明監督は『七人の侍』を撮るにあたり、キャラクターを立たせ、深みを持たせるため、それぞれの侍一人づつに大学ノート1冊分ぐらいの裏設定を書き込んだという。
「世界の黒澤」とは対極のシンプルな製作スタイル。
さらに、エンドクレジットを見ると「サンタクロース1」などと、名前ではなく番号で識別する囚人管理システムを採用してあることが判明。しかも5人までしかいない。表記も省エネ。
さらに細かいことだが、ジャケットのタイトルは『7人のサンタクロース』と数字表記。
しかし本編のタイトルはこのように『七人のサンタクロース』と、漢字表記というアバウトさが炸裂。
作品のラストには『宇宙戦艦ヤマト』の「地球の滅亡まであと○○日」の字幕と共に毎回映し出される瀕死の地球のような、何度見ても何かしょんぼり不安な気分になる真っ赤なサンタクロス星がまた映って幕を閉じる…
そんなこんなで楽しいクリスマスの夜にぴったりのアニメとはズバリ!この作品だ!
ご家族や愛する人と一緒にぜひ!
なぬ!?
観ようにもどこにも動画が落ちてないですと!?
そんなこと言ってると、このレビューを書くために定価の5倍ぐらいの値段でオークションでやっとゲットしたVHSビデオを、深夜、窓から土足で上がり込んで、枕元にお届けしちゃいますゾ!
- オススメ度…39/100
- 無料動画の配信…なし
- 有料動画の配信…なし
- ソフトのレンタル…なし
- ソフトの販売…中古のVHS