■監督:福本潔
■1988年
■各巻30分
1巻 『神章 A.D.1990 璃子』
2巻 『魔章 R.C.297 ルリシア』
うるわしい美少女!
そして紅蓮の炎を吐く竜!
このタッグに心を焦がされない者は、長きに渡る人類の世紀において存在しない。
『竜世紀』もそんなみんな大好き「ガール&ドラゴン」もの。いわゆる「ガルドラ」系のOVAだ!
「ガルドラ」って私が今、勝手に思いつきで書いたジャンルなので他の作品がまったくパッと思いつかないが!
原作はマンガ家の竜騎兵さん。
その名の通り「竜」に並々ならぬ燃える情熱を注いだこだわり作品を武器に、ちょっとマニアックなルーキーたちの人気作家への登竜門《レモンピープル》などで戦ったマンガソルジャーである。
そんな竜騎兵さんの単行本『DRAGON BREEDER』は、士郎正宗さんともバトル可能なほど緻密に描き込まれた世界の中で、美少女、メカ、モンスター、そしてもちろん竜たちが躍動するSFファンタジー作品をギュッと詰め込んだ入魂の短編集だ。
掲載誌があの《レモンピープル》だけに、ノーモザイクな初期『くりいむレモン』ぐらいモロ出しな甘酸っぱい作品も中にはあり!きっとみなさんの股間のDRAGONも思わずBREEDしてしまうのではないだろうか?他に何かもっと良いほめ方すすめ方はないだろうか?
私の筆力の無さはともかく『DRAGON BREEDER』は一読の価値有り!
結構な高額になってしまっているのですが、興味ビンビンの方には激しく雄スメいたします!
そんな『DRAGON BREEDER』に収録の一篇『竜世紀』。
おちゃめな竜使いの美少女ルリシア。彼女と契約した老賢者のように頼もしいドラゴンのカーマイン。2人の旅とその終わり、そして真の大いなる戦いの始まりを描いた作品である。
闘技場でのバトルを繰り返す少年漫画的展開!
その陰に垣間見える謎の邪な存在と、とつぜん姿を現わした魔王ゼノンばりに絶望的に巨大で禍々しいその姿!
それに挑むカーマインは竜ってだけでも強いのに、さらに超巨大ロボに搭乗!その名はガルガンチュア!
「1話につきわずか数10ページで全4話」という、とても短い作品でありながら、創世記や黙示録の絵物語の断片を読み聞かせてもらったような読後感すら感じさせる作品だ。
OVA版はこの神話を、旧約聖書、新約聖書のように上下2巻でアニメファンに向けて伝道。
原作は第2巻の『魔章 R.C.297 ルリシア』にあたる。
第1巻の『神章 A.D.1990 璃子』は完全なオリジナルエピソードである。
この大胆なアレンジをなさったのは、Vシネマの帝王じゃないほうのあいかわしょう。OVA脚本の帝王こと、会川昇さん。
「約30分~50分」というタイトなOVAのフォーマットに、数々の脚本を見事に落とし込んできた匠の技は本作でも炸裂。
シンプルな原作にはなかった「ルリシアの父の仇探し」という燃える物語を肉付けして味わい倍増。
仇である「黒い竜と謎の青年」の正体と目的、ルリシアとカーマインの契約にまつわる驚きの真相などなど、投入されたさすがのサプライズ要素の数々に気持ちよくビックリ。
世界の破滅を夢見る女子高生、璃子がヒロインを務める、現代を舞台にしたOVAオリジナルの上巻へ、原作ほぼ準拠のファンタジーな下巻のラストがしみじみ繋がっていく構成もお見事。
その上巻で「デビルマンのデーモン軍団の人間界襲撃と無差別合体」チックな展開が描かれる。
これは「アニメで観ることはついに叶わなかったあの地獄がここに!」な夢のようなシーンと言えるだろう。
80年代OVAの華、スプラッター描写も全開満開!作画監督の越智博之さんがその腕を存分に振るい、血肉の華を咲かせる!
また、2巻のヒロイン、ビキニアーマー美少女ルリシアは、ただでさえかわいい北爪宏之キャラを声優界の親指姫こと本多知恵子さんが演じたことでもう!かわいさ巨人級!親指をグッと立てること間違いなし!
…と、このようにこの『竜世紀』、なかなか見応えのある作品。
VHSビデオの衰退とともにアニメ史に埋もれ消えてしまうことなく、DVD化されて遺されたのも納得!80年代いにしえっぽさ満点なガルドラ神話OVAになっております!