■監督:南家こうじ(想い出して下さい) 堀口忠彦(時計をとめて)
■1986年
■15分
■巻末に振り付けビデオも収録
昭和お笑いバラエティー界の大将、欽ちゃんこと萩本欽一さんは、当時「視聴率100%男」と呼ばれていた。
『欽ドン!良い子 悪い子 普通の子』『欽ちゃんのどこまでやるの?』『欽ちゃんの週刊欽曜日』などなど…
出演なさっていた数々のどの番組も超人気で、その視聴率を合計すると「100%」をドン!と超えたからである。
私ももちろん欽ちゃん走りでテレビの前に駆けつけ、夢中で観ていた。
個人的には特に、月曜の夜9時に放送されていた『欽ドン!良い子 悪い子 普通の子』がお気に入りであった。
お父さん役の欽ちゃんが座るお茶の間のセットに、ヨシオ、ワルオ、フツオの3人息子が順番に現れ、視聴者からのハガキを元に、それぞれのキャラクターにそったおもしろ一幕を演じるという内容。
地獄の1週間の始まりで、さすがの良い子の私も『ゴジラ』が広島湾から上陸して『幻魔大戦』も近所で行われて世界がムチャクチャになって学校どころじゃなくなるのを心底願うぐらいとにかく重苦しい月曜のどんより気分を、間違いのない確かな笑いで突き飛ばしてくれる さすがの欽ちゃんクオリティーはもちろんのこと、任天堂が提供についており、途中でファミコンのCMが必ず観れるのも大きな楽しみであった。
ちなみにこの時、小学生の私は『欽ドン!』にハガキを出している。
たしか、母と息子の短い会話劇のようなネタで
息子「お母さん、どうやったらお金持ちになれるの?」
母「えっとね、覆面とピストルがあったらなれるわよ。」
…というような、無邪気さとピリッとしたブラックジョークがいい感じのハーモニーを奏でるなかなかいい感じのものであった。
しかし芥川賞の発表を待つ作家の顔で毎週テレビの前でドキドキ座っていても、私のこの名作が欽ちゃんの口から読まれることはついになかった!ガーン!
なんでそーなるの!?
ポストに入れる前に母ちゃんに読ませたらあんなにバカウケだったのに!
私の北風のような寒いドンずべり想い出トークはともかく、そんな欽ちゃんの番組からは、なにげにたくさんのアイドルやユニットが生まれ次々に大ブレイク!
イモ欽トリオ、よせなべトリオ、わらべ、サンドイッチ、風見慎吾さんなどなど…
数々の名曲を歌い、ベストテンの常連になり、お笑い界だけでなく音楽界もにぎやかにしていた。
中でもあの細野晴臣さんが作曲し、ゴリゴリのテクノなアイドルソングに仕上げ、YMOも真っ青の異常なメガヒットとなったイモ欽トリオの『ハイスクールララバイ』の凄まじさは言わずもがな。
しかし、個人的にもっとも思い入れがあり、いつも夢中で観ていたのは、風見慎吾さんが歌う『涙のtake a chance』である!
これは本当に衝撃だった。
驚きのアクロバットがムチャ盛りの、サービス満点かつハード極まりないダンスを、風見慎吾さんは歌番組に出るたびにいつもキレキレの動きでクリアしながら、口パクなしの全力汗だくで歌い踊っておられたのである!
私にとって「ブレイクダンス」と言えば、マイケル・ジャクソンよりも断然、風見慎吾さんであった。
前奏の回転ジャンプからのビシッと足を伸ばしてキメる着地、途中のマイクを握ったままのバク宙のとことかホント凄い!あ然!
今の若い方が観ても、きっと驚かれるのではないだろうか?
ハッ!
しまった!
「80年代のOVA」を紹介するサイトなのに、ついつい「欽ちゃんの思い出ばなしどこまでやるの!」になってしまった!
みなさんにバイナラされてしまう前に本題に入ろう。
今回、紹介させて頂くOVA『想い出して下さい/時計をとめて』は、毎週木曜日の夜9時から放送されていた『欽ちゃんのどこまでやるの!』、通称『欽どこ』で誕生した2つのユニット《サンドイッチ》と《わらべ》の歌を収録した全編アニメのミュージックビデオである。
1曲目は『想い出して下さい』。
歌っているのは、あの小堺一機さんと、アナウンサーの藤井暁さん、そして実写版『グリーンレクイエム』の緑色の髪がショッキングだった女優の鳥居かほりさんからなる3人組ユニット《サンドイッチ》である。
欽ちゃんファミリーヒットソングスの中でも最大級のモンスター『めだかの兄妹』のMVに続き、監督はあの南家こうじさんが担当!
心に涙のような雨が降っている人の孤独にそっと寄りそうような歌に合わせ、南家さん必殺のシンクロアニメがまたしてもほのぼの炸裂!
アニマル化された愛らしいキャラクター、パステル画の挿入なども南家さん濃度高し。(よく見てると小堺一機さんのワンちゃんキャラがちょっとかわいそうになるが!)
また、フリーハンドで描かれたやわらかな水彩画の背景もノスタルジックなムード満点。
雨上がりの夕方、雲間から射してきた陽の光を浴びた時のような暖かな気持ちにジワリと満たされる、「切なさ のち 晴れ!」なMVに仕上がっている。
ちなみにアニメではなく《サンドイッチ》の皆さんが実際に歌っている動画がYoutubeにあった。
鳥居かほりさんがクラリス級にあまりにも清楚で可憐で悶絶してしまったので貼らせて頂く。
2曲目は、ニャンともしがたいワケあって3人組から2人組に成長した《わらべ》の『時計をとめて』。
監督は堀口忠彦さん。
80年代のクロネコヤマトのCMや(なにげに声優があのお二人でビックリ!)、みんな大好き《Perfume》による、ちょっととんでもなく可愛すぎるカバーでも話題をふりまいた『コンピューターおばあちゃん』の元祖みんなのうた版などを担当なさった方である。
「孤独」と「切ない一途な祈り」が胸を打つ荒木とよひささんの歌詞がすばらしい。
そしてその歌詞を聖歌隊のようなピュアな清らかさで表現した《わらべ》の透き通る歌声に合わせ、前作『もしも明日が…』のMVにもキューピッドとして登場した《なみだ天使》が、街に福音を告げるように夜空を舞う…
ステキな人がそばにいてくれることに感謝の気持ちを捧げたくなる幸福なクリスマスの夜のような気分に、毎年誰もそばにいないクリボッチの鬼のような私でもホンワリと包まれるような名曲、名MVである。
- オススメ度…66/100
- 無料動画の配信…Youtube(想い出して下さい 時計をとめて)
- 有料動画の配信…なし
- ソフトのレンタル…なんと!VHSビデオのレンタルあり!→K-PLUS
- ソフトの販売…中古のVHSがたまに…ない!
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