『光GENJI 太陽がいっぱい』社会現象を巻き起こしたスーパーアイドルグループのアニメMV!

■監督:柳瀬三郎
■1989年
■6分30秒

 

80年代のある夜。
数多くの歌番組の中で、人気的に文句なくベストワンだった『ザ・ベストテン』を観ていた時のこと。
ジャニーズ事務所の「ある新人グループ」が、新人に光を当てる「今週のスポットライト!」のコーナーなど眼中ない感じですっ飛ばし、黒柳徹子さんの「今週の初登場第1位!」の声で回転ドアの向こうからローラースケートに乗ってさっそう登場!
時に過激に、時に華麗に、アクロバティックかつドラマチックかつチャーミングにすべり踊り歌い、ブラウン管の前の いとやむごとなき際にはあらぬ私はもちろん、日本人全員の度肝を抜いたのであった。
そのグループこそが…
そう!
デビュー曲『STAR LIGHT』をスタートに、日本芸能界のトップスターとしてまぶしく光ることになる、あの《光GENJI》であった。

 

 

あっという間に人気を完全に獲得した《光GENJI》の勢いは本当に驚くべき凄まじさであった。
藤井フミヤさんも、たしか『さんまのまんま』で「レコーディング先のアメリカから帰ってきたらローラースケートに乗って転んでるヤツらがいてビックリした。」と、驚きを口にしておられた。
次々に出される新曲はすべて大ヒットしていた。

 

 

ホントに光源氏ばりに女性の皆さんにもちろんモテモテで、バレンタインの時には贈られたチョコレートで「武道館の2階席まで埋まる」とのことだった。
ウサギのフンほどの大きさのムギチョコ1個たりとももらえぬクソみたいなガラスの十代をおくっていた私とはえらい違いである!

 

 

そんな私の周り…からいつも半径8メートルぐらい距離を置いておられた女子の皆さまも「かーくん(諸星和己)」がどーの「ウッチー(内海光司)」がどーのと、キャッキャとよく話しており、「マッチはジャニーズだけどバク転ができない。」ぐらいしか知らぬ失礼なジャニーズ情弱のスッチー(倉井スエ)も「衣装の違う2人がちょっと年上で光(ひかる)。あとの5人がGENJI。合わせて光GENJI。」と、光GENJI豆知識を自然とゲットしてしまうほどであった。

 

 

彼らが出ていない歌番組は見かけなかった。
しかし私の周りに「光GENJIのCDを買ったんよ!」という人も見かけなかった。
以前、やはりジャニーズの《少年隊》が『仮面舞踏会』でいきなり《ザ・ベストテン》の「初登場第1位」に踊り出た時も思ったが「レコードを買った人って周りで見たことないのに、なんでいきなり1位になるんかのう…」と不思議だった。
兄にそのことを聞くと「おう!あれはのう、いっつもジャニーズが歌番組に金を払うて1位にしてもろうとるんで。インチキなんで。芸能界はぶち汚いんで。」とぶち汚い広島弁で大変失礼なジャニーズ都市伝説を語っていた。

 

また、こんなこともあった。
ある朝、世田谷のある中学校の校庭に、机をきれいに並べて作られた謎の「9」という数字が、ミステリーサークルのごとく突如出現!
いわゆる《机「9文字」事件》である。

 

 

ワイドショー番組はどれもこのオカルトミステリーチックな9文字1色!大騒ぎ!
全日本人が名探偵となり、連日この不気味な「9」の謎について考察する中、犯行声明が届いた。
それは「少年隊3人と光GENJI7人を足した数字から1を引いたものだ…」とのことであった。
つまり「その中から誰か1人を…」ということではないか?
あまりの不吉さにみんな震え上がりさらに大騒ぎ!(しかし、犯人たちはすぐにつかまり、目的も「世間を騒がせたかった」というただのイタズラだったらしい。)

 

また、70年代に人気絶頂だったジャニーズのアイドルグループ《フォーリーブス》のメンバー 北公次(きた こうじ)さんが、おそらく昭和最大の爆弾的芸能暴露本『光GENJIへ』の刊行を敢行!

 

私は結局未読なのだが、どうもジャニーズ事務所の社長、ジャニー喜多川さんによる、所属美少年タレントたちへのセクハラなどについて書かれているらしい。
ジャニーズタブーにタッチしたこの本は、どえらい騒ぎのベストセラーになっていたが、なぜかテレビのワイドショーではノータッチ。
不思議に思って兄に聞くと「おう!あれはのう、ジャニーズ事務所がテレビ局に口止めしとるんで。もしこの件に触れたらウチのタレントはおどれらの局にはいっさい出さんけえの!…ゆうておどしとるんで。芸能界はヤクザみたいな世界なんで。」とヤクザみたいな広島弁で大変失礼なジャニーズ都市伝説をまた語っていた。
本の真偽のほどは私などには知る由もないが、興味あるならYOU 読んじゃいなよ!

 

 

このたび紹介させて頂くOVA『太陽がいっぱい』は、そんな社会現象を巻き起こしたスーパーアイドルグループ《光GENJI》の7枚目の大ヒットシングルの、アニメーション・ミュージック・ビデオである。
「トランプと絵本付き!」という特典がいっぱいの豪華仕様でリリースされた。

 

 

絵本は花井愛子さんによるもの。
なかなか話題になった映画なのになぜか円盤化が未確認な『山田ババアに花束を』の原作小説でもおなじみの人気小説家。
「読みやすい文章で書かれたライトなストーリー+人気絵師」という現代ライトノベルスタイルの礎を、驚くべき作品数のヘヴィな積み重ねでガッシリと築きあげた方である。

 

 

絵は、その花井さんとよくタッグを組んでおられた くすのせあつこさん。
いま見ても可憐な枯れぬお花畑のような作品を紙面にキラキラまぶしく咲かせることのできる少女マンガ家&絵師さんである。

 

 

お2人の手によって作られた絵本の中に広がるのは、純度100%の乙女チックで美しい世界!
男の子におそれとあこがれを抱く幼い女の子の問いかけに「あなたのたいよう そんなひとに かならず あえるの」と、お母さんが優しく答えるという、太陽のようにまぶしくあたたかな愛でいっぱいの内容になっている。

 

 

そしてミュージック・ビデオであるが、大人気だった《光GENJI》のメンバーの皆さんはいっさい出演せず、なんと全編アニメーション!
今でこそ この形式はよく見かけるが、当時はまだ珍しかったと思う。

 

 

そこにさらに、やはり当時はまだ珍しかったCGを融合!
なかなか斬新でチャレンジングな作品になっている。

 

砂漠や海などがCGで表現されている

 

このアニメMVのディレクターは柳瀬三郎さん。
お茶の間にぶち込まれたメタリックなフルCGと、『オーガス』の主題歌でもおなじみの超時空シンガー、ケーシー・ランキンさんの「We want Mets!」の歌声で「メッツが欲しい!」と人気がはじけ、日本人全員に「かわきにおさらば」させた大ヒット炭酸ドリンク KIRIN《メッツ》のCMを作った方である。

 

 

作詞作曲を担当したのは、『十人十色』などの大ヒット曲でおなじみの、あの大江千里さん。
根暗なイメージだった「メガネ男子」をチャーミングなモテポジションに押し上げてくださったのはこの方と言っても過言ではない!

 

 

大江さんらしい、明るく、さわやかな楽曲にのせ、特徴バッチリなアニメキャラ化された《光GENJI》のメンバーが海へ空へと大冒険!

 

 

闇におおわれた世界に太陽の光を取り戻すというファンタジック・アドベンチャーが、そんじょそこらの宗教アニメなどぶっ飛ぶぐらいヒロイックにまぶしく描かれる。
観ればきっと、あなたのその髪に その指に 太陽がいっぱい!

 

 

  • オススメ度…59/100
  • 無料動画の配信…Youtube
  • 有料動画の配信…なし
  • ソフトのレンタル…なし
  • ソフトの販売…中古のVHSがオークションなどで