『花のあすか組! 新歌舞伎町ストーリー』 風がこわくて ノーパンやってられっか!

■監督:梅澤淳稔
■1987年
■50分

 

『花のあすか組!』は私にとって、とても不思議な味わいのマンガだった。
80年代のこと。
『BE-BOP HIGHSCHOOL』と『湘南爆走族』という二大番格がとんでもなく名を上げたことにより、各マンガ誌が「遅れをとるな!後へ続け!」と、不良・ヤンキー・ツッパリものをバリバリ掲載!「不良マンガ」というジャンルそのものが急成長し、バラエティー豊かなワルたちが紙面をシメることになった。

 

私は『花のあすか組!』もその中の一つなのだと思っていた。
大変失礼ながらブームの中に現れた、わりとよくある普通の不良マンガのスケバン版なのだと思っていた。
しかし、読むと全然ちがった。
全然普通じゃない、とても不思議な味わいのマンガだった。

 

 

『花のあすか組!』のヒロインの名は九楽あすか14歳。
百恵ちゃんカットのクールかつミステリアスな美少女だ。

 

 

このあすかが、謎の女ラスボス ひばりが率いる巨大スケバン組織《全中裏》と戦うというのが基本的なストーリー。
《全中裏》からは、カラス使い仮面スケバン、鞭使いスケボースケバン、かまいたち戦士スケバンなどなど、まるで白土三平マンガの忍者のような刺客スケバンたちがバンバンに襲い来る。カムイもあわててドロンしそうな奇妙キテレツさ!
それに対しあすかも金貨にチェーンを取り付けた俺ジナルウェポンで対抗。ヨーヨー使いのスケバン刑事こと麻宮サキもビックリ!
常に校庭をバイクが走り、爆音と爆竹と火災報知器のベルがけたたましいセッションを繰り広げてるのに、先生も生徒ももう誰も反応せず、普通に授業が進行するぐらいの広島一悪名高き中学校に通った私ですら、こんな恐ろしいスケバンたちの戦いは見たことがない!

 

そしてそんなまるでマンガみたいなエキセントリックなスケバンたちとは別に、リアルな女子中学生たちも登場。
いじめられっ子、自閉症の子、根性焼きをしないと学校に行けず校舎に放火してしまう子、仲間はずれを怖れてみんなと一緒に売春してしまう子などなど…
心に闇を抱えるこの少女たちが、あすかの行動や言葉から「大切な何か」を感じとり、少しづつ変わっていく姿が丁寧に繊細に描かれるのだ。
エキセントリック・スケバン・バトルアクションとリアル女子中学生ストーリーズのハーモニー。
とても不思議な味わいのマンガだった。
そう!
つまりめちゃくちゃ面白い!

 

 

大ヒットした『花のあすか組!』は、たくさんの外伝も描かれ、テレビドラマ化、角川実写映画化などなど各メディアを圧倒的なパワーで制覇。
そしてもちろんOVA化。2本の作品が作られた。
その1本目がこの『花のあすか組! 新歌舞伎町ストーリー』である。

 

 

数々の作品を手がけてきたアニメ脚本番長の寺田憲史さんは、単行本2巻と3巻の「秘の包囲網」のエピソードをベースにストーリーを構築。
あすか!全中裏!レディース暴走族《鬼族》!この三つどもえのハードな戦いを描き出した。

 

 

またその燃えあがる不良少女戦線に、あすかと同じ学校に通う売春少女よっこのエピソードを投下。
見せかけだった仲良し4人組からアッサリとはじかれ、楽しいゲーム感覚で残酷にイジメられ、苦しみ、死を選ぼうとするよっこにあすかは何を見せるのか?
そしてよっこが驚くあすかの過去とは…?

 

 

あすかをこの上なく凛々しく演じたのは、我らが永遠のお姉様ボイス声優、鶴ひろみさんである。
最初は長いスカートからのぞく足しか見せぬジラし演出がニクい。
そして、捨ててあったスケボーをちょいと拝借し、売春少女よっこにからんでたズベ公軍団に突撃!
「赤ずきんちゃんから手ェ放しな!」とナイスタンカを切り、まばたき厳禁の高速打撃コンボでシバきあげ、満を持してからのマブいご尊顔&全身ショット初見せ!ここで流れ出す音楽のタイミングも完璧だ!

 

 

ツボを押さえた演出が冴えるカッチョいいヒロイン登場シーンに、シルバーゴーストの頭(ヘッド)ヤスヒロならずともホレることまちがいなしである。

 

 

登場シーンといえば、まるで新聞記事を打つようなタイプライターのカシャカシャ音と共に各キャラクターの名前を画面表示。
これからこの少女Aたちが起こすであろう危ない事件への期待にドキドキ胸ときめかす細かい工夫がなされている。

 

また、アバンタイトルでさっそくブイブイいわせてる暴走族《鬼族》集会シーンの、禍々しさすらかもし出す光と影のコントラストを過剰に効かせた異様なタッチや…

 

 

花園神社懲罰シーンの、残酷さがクッキリと不気味にきわ立つ奇妙な白黒の線画描写などなど…
思わずハッとする画面造りのアイディアが随所に散りばめられている。

 

 

石を投げれば悪党に当たる荒んだバイオレンス・パラダイスとして描かれる新宿歌舞伎町の美術も丁寧で細かい。
浄化作戦前のあの頃のデンジャラスなムードが満点。

 

 

そして、本作で個人的に一番ガン上がりしたのは、クライマックスの戦いよりも、その「戦いに向かうシーン」である。
打ちのめされ、死の淵まで追い詰められた売春少女よっこ。

 

 

彼女に「どうやって強くなるの?」と問われたあすかが「来な!ケンカのしかた教えてやる!」と言い放ち、燃えるような夕焼けの中を戦場に向かって2人で歩いていく。
ここでかかる挿入歌の援護射撃も効果絶大!勇壮な歌声と2人の歩みに合わせてテンションが右肩ガン上がり!
歌うのは、『機動戦士ガンダムZZ』の主題歌『サイレント・ヴォイス』でおなじみ、全然サイレントじゃないパワフル・ヴォイスの持ち主ひろえ純さんである。聞けば体にパワーみなぎることまちがいなし!

 

そうそう、そう言えば、尻のことだけにケツまで言い忘れてましたが、原作で有名なあの「あすかのいきなり尻見せ!」は、このOVAでもバッチリあり!
「風がこわくて ノーパンやってられっか!」の名セリフも原作通り!(そう!ワケあってあすかたんはノーパン&ノーブラなんである!)

 

 

最近ひどい頻尿で、ノーパンどころかリハパンの着用を真剣に検討し始めたシャバいオッサンの私なんぞは金玉が縮み上がってしまう金言を次々と言い放つカリスマ少女あすか。
80年代少女マンガ界をシメた驚くべきこの14才のバイオレンスを皆さまもくらうべし!

 

 

オススメ度…68/100
無料動画の配信…Youtube
有料動画の配信…なし
ソフトのレンタル…なし
ソフトの販売…中古のVHS

 

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