■監督:芝山努
■1986年
■30分
「社会人なら野球の話ぐらいできなきゃダメだよ。」などと言う人が時々いる。
私はもういい大人なので、この手の「自分の考えを、従うべきマジョリティーの常識として、上から目線で押し付けてくる未熟な人」に対し「そりゃおかしいだろ!どうなんだ!」と怒ったりはしない。
そう。
私は野球を全然知らない。野球の話ができない。
「広島なんだからカープファンなんじゃないの?」とおっしゃるかもしれない。
もちろん優勝とかした時の広島の街全体が浮かれてるお祭りムードなどは好きなのだが、でもカープのことは全然知らない。山本浩二と衣笠祥雄とカープ坊やしか知らない。
そんな野球情弱の私だが、さすがにルールぐらいは知っている。
「なんか…3回空振りしたら…なんか…メッチャ怒られる。」
それがルール。
完全に意味がわからない。理不尽きわまりない。それが野球のルール。そう…知っている!
チビッ子の頃、その地区のジャイアンみたいなヤツにむりやり参加させられていた草野球でいっつも3回空振りして、のび太みたいにいっつもメッチャ怒られとったからな!
だいたいなんで、あんな人を殺せるスピードで飛んでくる かったい、ちっこい玉を、ほっそい棒で必死こいて打って、そのあと全力疾走せにゃならんのか!意味がわからん!
なんで社会人だからといって、こんな宇宙人が考えたような変なルールのキテレツスポーツの話ができにゃならんのか!
そりゃおかしいだろ!どうなんだ!
さっきから「チビッ子草野球で怒られた恨み」と「野球トークを社会人の必須スキルとして押し付けてくるクソに対する怒り」をクソみたいにぶちまけてるばっかで、全然OVAのレビューをしていないではないかと思われるかもしれないが私もそう思う。
そう!
私は野球を全然知らないので「1985年の阪神タイガース日本一!」を受けて製作された本作『GOGO虎エ門』に詰め込まれた、きっとわかる人にはわかる、ニヤリ必至の「野球ネタ」がサッパリわからんちん!
どうにもこうにもレビューが難しいのである。
あまりにもネタがわからなかったので、少しではあるが調べさせて頂いた。
阪神タイガースが日本一になったのは、今のところ1985年のこの一度だけ。
同年の夏、あの「日航機事故」で球団社長の中埜 肇(なかの はじむ)さんが亡くなられ、その無念を背負っての戦いの日々。そして見事にリーグ優勝!
西武との日本シリーズが始まり、悲願の日本一に王手をかけた試合は、スタンドが まっ黄色の超満員。
「騒乱の可能性あり!」の黄色信号がついたため、多数の警備員がスタンバイ。異様な緊張感と熱気に包まれる中、ドラマチックな展開からの劇的な勝利!
かくして「虎フィーバー」が巻き起こり、その経済効果はなんと400億円にものぼったそうである!(なんで私はこんな大騒ぎをまったく覚えていないのであろうか?きっとファミコンとアニメ以外の情報はすべてすっかりトンネルしていたのだろう!)
本作『GOGO虎エ門』は、そんな「虎フィーバー」の翌年に作られた作品。
原作は似顔絵ギャグ漫画界の殿堂入りエース、高橋春男さん。
阪神タイガースを中心とした野球ネタはもちろん、当時の芸能スキャンダルなども取り入れ、ご本人たちが読んだら微妙な顔になること間違いなしの絶妙にプチげすい角度で攻めたギャグで、ストライクをビシビシ決めた4コマ漫画である。
OVAでは、高橋春男さんの職人的技術でデフォルメされた似顔絵キャラたちを完璧に再現。
《スタジオぴえろ》による作画が美しい。ディテールも凝っているし、よく動く。
阪神タイガースの優勝が決まり、選手たちが駆け寄り、『虎エ門のテーマ』が流れ始めるオープニングは、野球を知らぬ私でさえブチあがる極上の多幸感に満ちている。
また、ギャグ作品ではあるが、中埜 肇さんへの追悼が込められたシーンも忍ばせてあり、製作陣の誠実さを感じた。
先述した通り、私は「バース」と聞いてもこっちの『バース』しか思い浮かばないぐらい野球を全然知らない。
なので大変失礼ながら、選手の皆さんの顔や、小気味よく投げまくられるせっかくの野球ギャグがわからないことも多かった。しかしそれでも楽しめた。
なので阪神ファンはもちろん、野球が好きな方、詳しい方のハートには、きっと、もっと、ストライクがビシビシ決まると思います!
- オススメ度…64/100
- 無料動画の配信…Youtube
- 有料動画の配信…なし
- ソフトのレンタル…なし
- ソフトの販売…中古のVHSがたまに…ない!
※追記(2024年1月16日)
高橋春男先生のご冥福をお祈りいたします。