■監督:神田武幸
■〈消えた12人〉 1985年 57分
■〈”ケイトの記憶”涙の奪回作戦〉 1985年 57分
異星人の攻撃を受け、親と離ればなれになってしまった13人の子供たち。
彼らは宇宙船ジェイナス号に乗りこみ、はるか彼方の地球を目指し、無限の銀河を漂流する!
たどりつけるか?子供たちだけで!愛するパパとママがいる故郷・地球に!
「銀河漂流バイファム」は衝撃だった。
何が衝撃だったって、何たって、あの昭和アニソン史上屈指の名曲、おそろしくかっこいいオープニング「HELLO,VIFAM」である!
TAOというバンドが演奏するこの歌の何が衝撃だったのか?
まずロボットアニメで歌詞が全部英語!
今でこそ珍しくないかもしれないが、当時は衝撃だった。「orange」を思いっきり「オランゲ!」とか読んでしまう酸っぱい英語力だった私にはサビの♪バ~イファ~ム♪のとこしか聞き取れなかった。
そしてさらになんと!
バイファムが出撃し、敵を撃墜し、無事に帰還するまでのパイロットと管制官との会話が曲中にずっと流れているのである!
私はこのドラマチックな演出がされた歌にものすごい衝撃を受け、完全にしびれまくってしまった。当時そういうアニメファンは多かったと思う。
ちなみに私は生まれて初めて自分のこづかいで買ったレコードがこの「HELLO,VIFAM」なのである。
レコードには歌詞カードにちゃんと会話の部分も日本語訳が載っており、夢中で読んだ。
今の若いアニメファンの方々はこの歌を聞いてどう思うだろうか?
テレビ版ももちろん銀河一最高だが、できればフルバージョンもぜひ聞いてみて頂きたい。
無事に帰還したバイファムを、基地の女性型マザーコンピューターが ”Welcom home vifam7…”と迎え入れるあたりなんて、盛り上がる演奏とスパークして最高にドラマチックだ。
イイのはオープニングだけじゃない。
エンディング「NEVER GIVE UP」は聞くと不屈の闘志が湧いてテンションがガンガン上がってくるし、敵のエースパイロット・ミューラァのテーマ「THE ASTRO ENEMY」も「シャアが来る」と勝負できるぐらいカッコいい。
もちろん本編も最高だ。
芦田豊雄さんがデザインしたロリ可愛い少年少女たち13人の完璧なキャラ立ち。
その芦田さんが作画監督を担当した回の絵の美しさときたら!
アニメ雑誌などでチェックしては「うおお!来週のバイファムは芦田さんの作監じゃああ!」と放送日をワクワク待ったものである。
オープニングの前にその回のダイジェストが差しはさまれるワクワクのアバンタイトル方式。
大河原邦夫さんがデザインのロボット・ラウンドバーニアン同士のカッコいい戦い。
初めて戦闘を体験する子供たちの恐れ、成長。
ジェイナス号に積まれた石板の謎などなど…放送される金曜の夜7時がとにかく楽しみで仕方なかった。
放送日が途中で変わり、広島では土曜の午後1時半からに。
諸事情で放送時間が漂流しても、もちろん変わらず追いかけ続けついに最終回。
対立していた二つの種族がついにわかり合えたと思ったのにまさか!?まさか撃ってしまうのか!?…からのアレにあぜん。全編通してそこだけでかかる特別な歌「君はス・テ・キ」の援護射撃効果もあって涙腺爆裂!超号泣!
長い漂流の果てに最高のエンディングにきちんとたどり着いた本当にいいロボットアニメだった。
…って「さっきからずっとテレビ版の話ばかりして、このOVAの紹介をしとらんじゃないか!」と思われたかもしれない。
そう!しとらん!
なぜならこのOVA、テレビ版を観てないとさっぱりわからんちん。…というよりテレビ版のファンへのプレゼント的な作品なのである。
〈消えた12人〉のほうは本編の番外編。ジェイナス号の中で起こる幽霊騒ぎを描いたミステリーコメディー。
〈”ケイトの記憶”涙の奪回作戦〉は、死んだと思われていたあるキャラクターとの再会を描いたもの。賛否あるかもしれないが、きっと製作者の皆さんも登場人物たちを愛しており、幸福にしてあげたかったのだろう。とても優しい作品になっている。
ナヌ!そこの君!「なら本編を観てみようかな…」ですと!?
そう思ってくれた君はス・テ・キ。