■監督:坂田純一
■1987年
■30分
生活指導の教師とかに見せたら激怒しそうなふざけたノリを、全力でやり抜いた表彰すべき力作OVA《恐怖のバイオ人間 最終教師》。
そして、その原作者であるマンガ家・山本 貴嗣(やまもと あつじ)先生。
山本先生が、その長いキャリアの中で習得されたマンガ術を、時に厳しさも交えつつ、惜しげもなく披露してくださった〈本気のマンガ術 山本 貴嗣の謹画信念〉という本がある。
デジタル作画が主流になりつつある昨今でも、読むときっと、技術面ではもちろん精神面でもハッとさせられる金言に満ちた名著だ。(当時、本書を読んで〈ミスノン〉を試してみたマンガ描きの方は多いのではなかろうか?)
その中で山本先生はこう言っておられる。
ぼくは原稿用紙に向かっているときは、神でありたいんです。ぼくが「光あれ」と言ったら、真っ白い原稿用紙の上に光が登場するといったように、天地創造する立場にありたい。
お言葉通り山本先生は、無限に広がる大宇宙のような途方もないイマジネーションで、あまたの星々がきらめき、麗しの美女から恐るべきミュータントまで、個性豊かなキャラクターたちが縦横無尽に大活躍する、SF愛に満ちた魅惑の世界を、確かな画力で創り出すことのできる神。
その力たるや、同じ〈劇画村塾〉の門下生、高橋留美子先生にも匹敵すると思う。
そんな山本先生の初期の代表作が《エルフ・17》。(※エルフ セブンティーンと読みます。掲載誌の休刊により未完)
ピュアでロリ可憐なのに超怪力を持つエルフのルウと、常時パワードスーツ着用の虚弱メカオタク男子K・Kが、銀河帝国皇子のスチャラカ諸星行脚のお供に大抜擢。星から星へと駆け巡る宇宙珍道中を描いたSFスラップスティックの名作だ。
ヒロイン・ルウの銀河系男子全員キュン死必至のかわいさはもちろんだが、この原作で個人的に1番衝撃だったのは、巻貝のような容姿をした宇宙人、エイリア人のヨシカズくんが登場するエピソードである。
お年頃のヨシカズくんは、萌えの対象が〈人間の女の子〉ということで「気色わるい」と変態あつかいされているイケてないマイノリティ男子。
《くりいむレモン》ならぬ《くりいぷめろん》という人間モノ美少女アニメの直輸入ビデオをオカズにせっせと夜な夜なオナニー。
絶頂に達しては砲丸のごとき奇妙なナニをドスンと発射。ドアの外に親の気配を感じてティッシュ片手にオタオタしてしまうのである。
これは衝撃だった。
美少女の達人・山本先生がその剛腕を気合をこめて振るった《くりいぷめろん》の描写が、ティッシュ片手にオタオタしそうになるぐらいエロいのもあり、ドスンと強烈なインパクトだった。
この〈ヨシカズくんのマスかき〉は日本SFマンガ史に永遠に残る、センス・オブ・ワンダ―に満ちた名シーンではなかろうか。
さてこのOVAは、そんなヨシカズくんのエピソード…ではなく、ルウの登場と仲間たちとの出会い、そして最初に訪れた星・アラハスの神殿に眠る宝物の謎をめぐるドタバタを描く。
都市の電光掲示板に作品タイトルが表示される粋なスタートに続き、声優界の永遠の親指姫・本多知恵子さんが演じるルウが登場!元気いっぱい飛び回りながら原作にも負けぬチャームをふりまく。
武術大会でのルウの大暴れと客席も巻き込んだ大混乱は、ここぞのタイミングでかかる挿入歌〈強い子・ルウ〉を歌った笠原弘子さんの悶絶ボイスの応援効果も絶大で、アイドルコンサートばりにテンションぶちアガること必至!エンディングの〈DoDoドピンク・パワー〉もハートが桃色に染まること間違いなし!
諸国漫遊モノの長いTVアニメの「ツカミはOK!」なステキな第1話チックな30分だ。
「女性を描くのが生きがい」と言っておられた山本 貴嗣先生がプロデュースした、80年代SFマンガ界を代表するアイドルの一人、最高最強のヒロイン・ルウたんと共に、終わらない銀河の旅に出かけよう!
- オススメ度…75/100
- 無料動画の配信…dailymotion
- 有料動画の配信…なし
- ソフトのレンタル…なし
- ソフトの販売…中古のVHSがたまに…ない!ズコー!